夢の中へ


「ねえ、クレイ。起きてる・・・?」
暗い部屋の中、そんな声が聞こえる。
「ん、どうした、パステル?」
俺はベッドから上半身を起こし、彼女の方へ視線を向ける。
隣のベッドで、パステルも同じように体を起こしている。
俺との違いは、その横で、ルーミィとシロが寄り添って寝ている事と、 胸に、マクラを抱きしめている事ぐらいだ。
「外が気になって・・・眠れないの・・・」
パステルが弱々しく呟く。
今、シルバーリーブには台風が直撃している。
昨日一日かけて、家の補強をしたぐらいだ。
壁越しにも、風の唸り声が聞こえてくる。
激しい風雨が、雨戸を叩き続けている。
確かにこれではうるさくて眠れはしないだろう。俺もさっきから、なかなか寝付けないでいる。(もっとも、トラップ・キットン・ルーミィには関係ないだろうが)
「確かに凄い音だもんなぁ。うるさくて眠れないよ」
「あ、うん。それもそうなんだけど・・・」
パステルは言いながらマクラをギュッと抱きしめ、 口元を埋めるように顔を伏せた。
「なんだか怖くて・・・」
「怖い?」
「うん。どうしてだろうね、嵐の中に、一人で取り残されてるみたいな気分 になっちゃって・・・」
そう言って、パステルは押し黙る。
「大丈夫だよ。みんなそばにいるよ。俺だって、ここにいるだろ?」
「うん。判ってるんだけど・・・」
パステルは顔を伏せた姿勢のまま、上目使いにこちらを見た。
「ね、クレイ・・・。そっちに行っちゃダメ?」
「え・・・?」
俺には、パステルの言っている意味がよく判らなかった。
「だから・・・そっちで寝ちゃダメ? その・・・添い寝して・・・ほしい・・・」
不安の入り混じった、甘えるような細い声。
最後の方はほとんど外の音にかき消されていたが、彼女の訴えたい事は判った。
今明かりを点けたら、きっと彼女は耳まで真っ赤になっているだろう。
もっとも、俺だってそうだろうが。頬が火照っているのが感じられる。
「・・・いいよ。パステル、おいで」
俺はベッドのシーツをまくり、少し横に移動してスペースを空けた。
「うん・・・!」
パステルがマクラを抱いたまま、トコトコと近付いてきた。
「ありがとう、クレイ」
「いいさ」
俺は言いながらベッドに身を沈める。
その俺の胸の中に、パステルが飛び込むように身を寄せる。
そして、彼女は夢の中へ。
願わくば、良い夢を見れますように・・・。



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