空から舞い降りた冬の妖精。
とても綺麗で美しい欠片は、手のひらで融けて消えていった。
「クリスマス…かぁ」
わたしは、冬の空気に澄んだ夜空を見上げ、呟いた。
そう、今日はクリスマス。特別な日なんだよね。みんなでパーティをしようということになって、わたしはその買い出しに来ているんだ。
だけど…こんな時は、一人の時はいろいろ考えちゃう。ほんとは嬉しい日なのにね。嬉しくて、うきうきして、そして…切ないの。おかしいよね、楽しいクリスマスなのに。
――今日…雪、降るかなぁ。ホワイトクリスマスだったらいいな。そしたらわたしの願い、叶うような気がして…。真っ白な冬の妖精が、わたしの祈り、聞き届けてくれるような気がして。
でも。
「『ふたりっきりで雪を見たい』だなんて、贅沢だよね……」
そうだよ。みんなで楽しく過ごせるだけで、幸せなんだから。
それ以上、望んじゃいけない。
ため息をついた次の瞬間、突然背後から声がした。
「え? 誰と?」
「ひゃっ!?」
う、うわ。びっくりしたぁ〜!今考えてた本人がいるんだもんね。飛び上がりそうになっちゃった。
「え…あ、わたしそんなこと言ってないって。クレイってば、空耳じゃない?」
自分の顔がかぁっと熱くなるのを感じたけど、とりあえず否定する。すると、クレイは首を傾げた。
「あれ? 確かに聞こえたんだけどなぁ。まぁ、いいか。パステル、買い物終わったんだろ?おれもバイト終わったから、一緒に帰ろう」
よかった。クレイは何も気づいてないみたい。わたしはほっとして、歩き出した。
それからわたしたちは、話しながら歩いていたんだけど。しばらく経った時、クレイが空を見上げて言った。
「今日って、クリスマスなんだよなぁ。雪、降るといいな……パステル?」
急にうつむいてしまったわたしに気づいたクレイが立ち止まった。
いつもは、言えないこと。今なら言えるような気がする。
「クレイ…さっき言ったこと、嘘なの」
「え……」
「あのね…さっきわたし、『クレイと雪を見たいな』って思ってたんだよ」
彼は驚いたように目をまんまるにしていた…と思ったら、すぐ笑顔になってこう言った。
「おれも実は、パステルが言った相手がおれだったらいいな、なんて考えてたんだ」
今度はわたしが驚く番だった。
――信じられない…。
声すら出なかった。もう、びっくりしちゃって。
「あ、雪だ……」
クレイの声に、かすんだ空を見上げたら。
「綺麗……」
ふわり、と舞い降りた雪。凄く綺麗で美しくて、思わず声が漏れた。
「ホワイトクリスマス…だな」
「うん…願い、叶えてくれたんだね」
「? なんか言った?」
わたしは、首を振って答えた。
「何でもないよ」
空から舞い降りた冬の妖精。
それはすぐ融けてしまうほど、儚いものだけれど。
聖なる夜に、静かな道で。
わたしの願いを叶えてくれた――
END
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