予約宣言

 予想どおり、だった。
 クレイにホワイトデーのネタを振ると、思いっきり忘れてた。
 …それじゃダメだっての、クレイちゃん。
 相手があのパステルだからまだ済んでっかもしんないけどな。
 普通の女だったら、間違いなくアウトだぜ。

 いつもの俺なら、そんなの放っておいただろうけどな。
 俺も実は、悩んでた。
 マリーナに…何を贈るか。

 そして決めた。

「よお」
 俺は何食わぬ顔で、あいつに話しかける。
「……トラップ?あんた、いつこっちに来たわけ?」
 目を丸くした、マリーナ。
 結局俺は、エベリンまでやって来た。
 なんだかんだと言って、少しでも会いたいからな。

「ま、細けーことは気にすんな。それより、ほれ」
 無造作にポケットに突っ込んできた小さい箱を、マリーナに放り投げる。
「わ!急に投げないでよ、落としちゃうとこだったじゃない」
 マリーナは見事、キャッチした。
「ところで何?これ…」
 小さなリボンがついた箱を、マリーナは眺めてる。
 俺は、自分の顔が急に熱くなってきたことを感じた。
「おめぇにやるよ。じゃ、またな」
 俺はそう言うと、くるっとあいつに背を向けた。
「え?ちょ、ちょっと、トラップ…!?」
 マリーナが後ろで戸惑っているけど、あえて無視。
 後ろ手で手を軽く振って、あいつの店を後にした。

 俺があいつに、贈ったもの。
 ピンクの石がついた、銀の指輪。
 あいつに似合いそうな気がしたから。
 それから…サイズが左手の薬指にぴったりそうだったから。

 これで、おめーの予約ってことだよ。
 勘のいいおめーなら気づくだろ?

 次に会ったときは、必ず指輪、はめてろよ?



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