横顔を見つめて


今年はどうするんだろう
町に甘い香りが漂い始めると
君の横顔を眺めることが多くなる

イベントそのものに興味がないのか
今まで誰かに渡したことも
興味深げにチョコを見つめることもないけど

今年はどうするんだろう
渡したい相手はできたんだろうか
君の横顔は何も語ってはくれないけど

バレンタインの当日に
君に呼び出されて
期待しすぎないように
後をついていった

「これ、クレイに」

ぶっきらぼうだと思えるくらいの
普段とはかけ離れた君
礼を言って受け取って
包装紙を外すと
薬草チョコが重なっていた


義理だよな、どう考えても


高揚していた心が
瞬時にして冷たくなる
君に向ける笑顔さえ
硬くなったような気がした

「ちょうど切れてたから助かったよ」

心の内をごまかすように告げると
君は不思議そうに
おれの手元を覗き込んだ

「なんで!?」

叫び声を上げるなり
おれの手からチョコを奪い取って
包装紙のあちこちを見回した

「ちゃんとハートマークついてるのに。
ごめん、クレイ。これもクレイのなんだけど、本当はこれじゃなくて。
今日は薬草チョコがすごく安かったからみんなの分もまとめて買ったんだけど
そしたら薬草チョコまで包装してくれて、わかるように印しといてくださって言ったのに。
これはまた後で渡すから。ちょっと待っててくれる!? すぐ戻るから!」

おれが答える間もなく
君は駆け出していった

その姿を見れば
次に持ってきてくれるだろうチョコが
何を意味するのかわからないはずがない

おれにだけ渡してくれる想いを
大慌てで取りに行ったパステルが
愛しくてたまらない

君が戻ってきたら
君のくれた勇気に
どんな言葉を返そうか





特集の部屋へ