トラマリ Love Fortune小説風

トラマリWEBドラマの続きです〜。どこまで続くのかな?


続きはこちら!


「よっしゃ〜っ!!一緒につれってったるでぇええ〜!!」
トラップは混乱して…というよりやけになって叫んだ。
「わぁーい! あいあと〜!」
ルーミィはにーっと笑ったが、トラップは複雑な表情をうかべただけだった。
「それにしても、なぜ関西弁・・・!?」
「こまけーことは気にすんな! ルーミィと3人でのんびりしようや」
マリーナのつっこみに、トラップはマリーナの方を見た。
ルーミィと一緒でもそれはそれで良いか、と思い始めたのかもしれない。
(やったあ♪久々にクレイと2人きりっ!!)
そんな3人の様子を見てパステルの心は踊った。
が、しかし、
「じゃあ、クレイはわたしと…」
と言ったのはパステルではなくキットンだった。
キットンがクレイに話しかけようとすると、パステルの鋭い視線が飛んできた。
「どうした? キットン」
キットンの言葉が途絶えたのが気になったのか、クレイはキットンに
「い、いえ、なんでもないです。気にしないでください」
パステルの目線が恐かったのか、キットンは慌ててクレイの疑問を打ち消した。
(クレイはやっぱり鈍感ね…)
マリーナはこっそり呆れていた。
「クレイ、あとで一緒に散歩でも行かない?」
鈍感なクレイなことはもちろんパステルもよくわかっている。
パステルの方からクレイを誘うようだ。
「あぁ、そうだな。なんかバタバタしちゃったしな」
「あのね私とっておきの場所見つけたんだっ」
パステルは嬉しそうにクレイに耳打ちした。
「じゃあそこ行くか」
「うん!」
空気がピンクに染まりそうなくらいな2人である。
本人たちにはきっと自覚がないだろうが、いわゆるらぶらぶ状態である。
(いいよなぁ、あいつらは。おれらなんか会えるのだってたまだっつーのによぉ…)
そんな2人を羨ましそうに眺めているトラップ。
素直になれば自分たちだって十分甘い雰囲気が作れることを忘れているのだろう。
「ルーミィちゃん。わたしも一緒に遊んでも良い?」
マリーナはしゃがみ込んでルーミィに尋ねていた。
「いいおー」
ルーミィはにっこり笑った。
「わたしたちはどうしましょうねぇ」
キットンがノルを見上げた。
「帰るか? シロ」
「はいデシ!」
「それじゃあ帰りましょうか。5人はほっといても良いでしょう。遅くなっても心配しませんので、どこにでも行って下さい」
2人と1匹は帰ることに決めたようだ。
キットンは残る4人を見て、軽くあしらうように手を振った。
「なんかキットン冷たい…」
キットンのその行動に、パステルは一言、もらした。
「冷たくもなりますよ。そんなにくっついていられちゃあ。あぁ、わたしのスグリはどこにいるんでしょう・・・」
寂しそうなキットン。
そんなことを言われては、世話焼き夫婦が黙っているはずもないだろう。
「探しに行こうな、キットン」
「そうだよ、キットン。ちゃんと探さなきゃ。大丈夫! きっとまた会えるから」
そう言ってキットンを励ました。
「だと良いですけどね」
キットンは寂しそうだったが、それでも気を取りなおしてノルとシロと共にその場から出て行った。
「キットンには悪い事しちゃったかしら?」
キットンたちが出て行ってから、扉を見つめ、マリーナが誰にともなく口を開いた。
「気にすんなって。帰ったらキノコ抱えて喜んでるだろうしよ。あいつは大丈夫だ」
「ふぅん。なら良いけど」
仲間を信頼するトラップに、マリーナは少しトラップを見なおしたようだ。うれしそうにトラップを見ていた。
「んじゃ、おれらも行こうぜ。行くぞ、マリーナ、ルーミィ」
トラップは、マリーナとルーミィに声をかけた。
「どこに行くの?」
「そだなぁ・・・」
マリーナに聞かれたトラップは考えながらルーミィを横目で見た。
「ルーミィねぇ、こうえんいきたいおう!」
その視線の意味を察したのか、ルーミィは元気よく答えた。
「んじゃ、公園に行くとするか。マリーナ、それで良いか?」
「うん、いいよー」
ルーミィの意見は即座に採用された。
マリーナに確認を取る辺りに、2人の関係が如実に…ではなく、トラップの優しさが見て取れる。
「んじゃ、とっとと行こうぜ。世話んなったな、ねぇちゃん」
トラップは占い師に片手をあげて声をかけた。
「いいえ。またいらしてくださいね」
占い師は笑って答えた。
3人は外へと出て行った。
「んじゃ、おれたちも行こうか」
最後に取り残されたのはクレイとパステル。クレイはちょっと照れつつもパステルを促した。
「そうだね。ありがとうございました!」
「500G、お願いしますね」
占い師はにっこり笑って、片手を差し出した。
占い師も仕事である。
当然のことではあった。
「・・・あはは」
パステルはサイフから500Gを取り出して占い師に渡した。
「悪いな、パステル。後で半額トラップに請求しとくよ」
クレイはそう言うと、さりげなくパステルが出した料金分のお金をパステルに渡した。
パステルは不思議そうにクレイを見上げる。
「こういうときは男に出させるもんだろ。気にせずにしまっといてくれよな」
「いいの? ありがたくもらっちゃうよ?」
「ああ、もちろん。」
「・・・えへへ、ありがと、クレイ。」
「お礼を言われるほどの事はしてないよ」
さりげない優しさを見せさせたらFQ一といえるであろうクレイはやはりこういうところはきちんとしていた。
元々はトラップとマリーナが入ってきたんだから2人が払うべきなような気もするが、自分たちも見てもらったということで割り勘にするつもりらしい。
あのトラップにどうやって250Gも出させるか。
それはまた別の話である。
「・・・どこいこっか・・・?」
店を出たパステルは後から続いて出てきたクレイを見上げた。
「パステルが見つけたっていう場所、だろ?・・・手でもつなぐ?」
「えっ・・・うん・・・」
珍しく積極的なクレイが手を差し出した。
パステルはその大きな手をしっかりと握る。
2人は森の奥へと消えていった。

ところ変わって、主役の2人+1匹。
「まいーなぁ・・・るーみぃおなかぺっこぺこだおう」
無事に公園へとたどりついた3人。
ベンチに腰を下ろしたらすぐにルーミィからお得意の言葉がかかった。
「え。そうだなぁ・・」
シルバーリーブをよく知らないマリーナはトラップを見た。
「いきなり色気のねぇ話だなぁ、おい」
「ルーミィがいるのに何を期待してるのかしら? こんなのはほっといてどこかに食べに行きましょうね、ルーミィ」
ぼやくトラップに呆れるマリーナ。
たしかにルーミィに色気のある話を期待する方が間違っているだろう。
マリーナはさっさと立ち上がり、ルーミィの手を引いた。
「まいーなぁ。どこで食べるんかぁ?」
ルーミィが手を引くマリーナの顔を見上げた。
「猪鹿亭」
マリーナが誰に猪鹿亭のことを聞いたのかは定かではないが、マリーナは一言でそう答えた。
トラップの言いようにまだ怒っているのかもしれない。
「じゃあねぇ、ルーミィは、なににしようかなぁ??」
が、ルーミィがわかるはずもなく、いつもながら『おなかぺっこぺこだおう』状態だったので、さっそくメニューを思い浮かべたようだ。
「まだ決めなくていいのよ」
気の早いルーミィにマリーナは笑いながら答えた。
ルーミィにかかればマリーナの機嫌も良くなるようだ。
「あら、ルーミィ。パステルは?」
そこにリタが通りかかって、ルーミィに声をかけた。
「るーみぃねぇ、いまかあ、まいーなといのしかていでごはんたべるんらぁ」
「あらあらお客さんなのね。良かったわねー、さっき大食漢が来て、材料を食べ尽くしちゃったから、今、買い出しに行ってきてたの。今から、店を開くんだよ」
リタは言葉通りに大量の荷物を両腕に抱えていた。
「はじめまして。マリーナです。猪鹿亭の方?」
マリーナがリタに自己紹介をした。
リタとルーミィのやり取りで、リタのことがわかったらしい。
「そうだよ。リタって言うんだ、よろしく」
「よろしくね。じゃあさっそく行っても良い?」
「うん。来てきて。2人?」
同年代の同性である気安さも手伝って、2人はすぐに打ち解けたようだ。
周りではしゃぐルーミィと歩き出しながら言葉を重ねた。
「おれもいる」
リタの背後からぬっと現れたトラップが不機嫌そうに言った。
「きゃあ!! ちょっと! びっくりさせないでよね、トラップ!! 」
トラップに気付いていなかったリタは大げさに驚いた。
それでも荷物を落とさないのはさすが料亭の娘なだけはあるだろう。
「なんだよっ、勝手に驚いたのはそっちだろ!」
「なによ、後ろからいきなり声かけられたらびっくりするに決まってるでしょう?」
「細かいことグチグチ言ってるほうがわりー」
「どこが細かいのよ、どこが!」
「どこもかしこも」
気の強さではトラップに負けなさそうなリタだけあって2人の言い合いは一歩も引かないまま進んだ。
ルーミィはさすがに怖いのかマリーナの傍で2人を見上げながら歩いていた。
「仲がいいのね」
笑いながらマリーナが言う。
トラップに負けてない女の子が珍しいのかもしれない。
「いいわけねえだろうこんなやつと」
「ちょっと、そんな言いかたないんじゃない?」
『こんなやつ』呼ばわりされたリタが怒りをあらわにする。
いくらなんでも言い過ぎだろう。
女の子にはもっと優しく接しないといけません。
「いい加減にしたら!?それにトラップ言いすぎよ!」
マリーナもトラップの言いように腹が立ったのか、トラップのほほをつねった。
「まあまあ二人ともおちついて」
そこに、実はこっそりトラップたちの後をつけてるんじゃないかという疑惑が急浮上したパステルがどこからともなく現れて2人をなだめにかかった。
クレイと2人きりになりたかったのではないのだろうか?
乙女心と好奇心は微妙なバランスをしているらしい。
「うっせー」
やはり女性に対する口の聞き方を知らないトラップだった。
「トラップ、そんな言い方はないだろ」
パステルがいればクレイがいる。
逆もまた然り。
ということで今度はクレイだ。
「マリーナに誤解されたとでも思ったのか? だからってリタにあたるなよな」
急浮上した疑惑が事実であることを認めるようなクレイの発言だったが、そんなことは誰も気にしていないようだ。
「なんだ、そうだったの?」
リタが呆れたように肩をすくめた。
「わたしはそんなに嫉妬深くないわよ。いやね」
マリーナはいつものように嬉しそうに否定した。
「パステル好きだぜ」
言ったのはもちろんクレイである。
「はあ?」
あらら、クレイ、パステルにキスしました。
『誤解されたらこうするんだよ』といわんばかりのクレイの大胆な行動。
後でパステルに怒られるんじゃないでしょうか。
「なにしてんのよ」
「あらあら、お熱いわね」
今度はマリーナが呆れ、リタがはやした。
ルーミィは「なにしてるんらぁ?」と不思議そうだ。
「やるじゃん、クレイ」
不機嫌だったトラップだが、親友の突然の行動に素直に感心した。
感心するところかどうかは別として。
「あんたは? クレイみたいにしてくれないの?」
と、今度はマリーナが大胆になったようだ。
トラップにしなだれかかり、その瞳をじっと見た。
恋人にそんなことえをされて逆らえる男の人がどれくらいいるかはわからないが、逆らう必要はとりあえずないだろう。
「愛してるぜ、マリーナ」
「わたしもよ、トラップ」
地の文がいらないんじゃないかなぁとか思ったり思ったりしつつ…。
「マリーナ…」
「トラップ…」
そして2人は唇を重ね…。
一方、クレイとパステルは、
「パステル...愛してる」
「私も.......」
もう完全に2人の世界です。
「ここ、店なんだけど…」
いつの間にか猪鹿亭の前についていたリタは取り残された形で一人つぶやいた。
「おなかぺっこぺこだおう!!」
ルーミィは動かなくなった4人にしびれを切らし大きな声で叫んだ。
「ギャハハハハハハハみんな何やってるんですか?」
ルーミィの声が聞こえたのか、キットンが声をかけてきた。
偶然なのかなんなのかを追求しても意味はないだろう。
「げっキットン」
仲間相手に「げっ」はないと思うが邪魔されたせいなのか2人だけの世界を覗かれて気恥ずかしいのかトラップの口をついて出たようだ。
「何ですか,トラップ,まったく化け物でも見たみたいに...」
キットンがぶつぶつと文句を言い出すのも無理はないだろう。
「落ち着いてノルたちは?」
そこはフォローの神様であるクレイがとりなした。
「公園にいますけどもうそろそろ帰ってくると思いますよ」
「こんにちは」
言うが早いか今度はノルだ。
公園でシロちゃんと遊んでいたのかもしれない。
「ほら帰ってきましたよ。噂をすれば影というのはこのことなんですねぇぎゃははははははははははははは」
「うるせぇ」
「うるさいとはなんですか、うるさいとは」
この2人は寄れば言いしかできないのかもしれない。
いつものようにジョブをはじめたが…。
「落ち着いてよ,もう」
次はパステルだ。
やはり気苦労夫婦未満である。
「そうよ,クレイとパステルの邪魔をしちゃ...すっかりラブラブなんだから」
意味ありげな視線をパステルに向けながら、マリーナが言った。
「っな,ラララブ..」
「ラッラブ?」
パステルとクレイすっかりてれちゃってる模様である。
その言葉が自分たちに当てはまるわけがないと思っているのか呆然としている。
が、マリーナが言うまでもなく、らぶらぶである。
「あらあら,そうゆうトラップさんとマリーナさんはどうですかねぇ」
意地悪げに言うのはリタだ。
意外でもないような気もするがトラップと同類なようだ。
にやにやと嬉しそうにマリーナとトラップを見る。
「リ,リタ!?」
突然の思ってもいない方向からの攻撃にマリーナの声が裏返った。
その様子に、我にかえったようにパステルとクレイが仕返し!?を始めた。
「そうそうマリーナとトラップってすっごくいい感じだったしねぇクレイ」
「ああ『愛してる』って言ってたし..」
仕返しをしたいのか2人で話しをしたいのか定かではないがパステルとクレイは仲良く頷き合った。
「っななによクレイだって言ってたじゃない」
どもりながらもマリーナが反論する。
が、それは反論ではなく問題のすり替えにすぎないだろう。
そもそもマリーナがどもっている事からして動揺は見て取れる。
「っうそっそういえば」
素直なクレイは素直にダメージを受けたようである。
『パステルを愛してるからね』くらいの切り返しを…しなくていいかもしれない。
そんなクレイはちょっと嫌かも。
「でもマリーナしっかり赤くなってしっかりてれてたじゃない」
詰まったクレイに代わって、パステルが歩み出た。
などと書くとまるで喧嘩してるようである。
そんなことはない。たぶん。
「あ、あれは別に…」
「おれがあまりにもかっこよくきめてたからさすがの美人マリーナさんもてれたんでしょうねぇ」
トラップが楽しそうに声をかける。
「と、トラップ」
なにもトラップ相手にどもることもないのだが、動揺は隠し切れないどころか、どんどん顕著化しているようである。
「別にいつもといっしょで全然かっこよくなかったわよ」
そこに入るのはリタの冷静な突っ込みだ。
「そそそうよ」
「でも照れてたわ」
パステルの言とは思えないような冷静さである。
「そそそんなことないわよ」
マリーナはどもらずにはしゃべれなくなってしまったかもしれない。
パステルもリタと同じように冷静だ。
あまりに動揺している人がいるといつも以上に冷静になれるのかもしれない。
「なんの話ですかぁ?」
忘れられそうになっていたキットンが女性陣を見まわした。
「んとね,マリーナとトラップのラブラブな話よ。もう,すごいんだから」
応えたのはパステルだ。
ものすごく嬉しそうである。
「ラララブラブ!!」
「そうよラブラブ」
目をむいてるマリーナと喜んでるパステル。
端から見ると異様かもしれない。
「い,いつからこいつと私がラブラブになったって言うのよ」
『こいつ』といわれたトラップは滅多に見れないマリーナを面白そうに眺めている。
それがまたマリーナの動揺を誘うようだ。
「それはもうずっと前からだな」
「っう」
クレイにまで言われてはマリーナも黙るしかないだろう。
「ねえねえ」
「なあに?」
くいくいと服のすそを引っ張るルーミィにパステルはかがみ込んで返事をした。
「まいーなぁととりゃーねとっても仲良しさんなんだお,だってねとりゃーとまいーなぁいつもお顔近づけてにらめっこしてたんらぁ。仲良しさんなんだお」
『いつも』だそうだ。
遠距離恋愛とはそういうものかもしれない。
「ふうん,いつもねぇ。なにしてたのかしらぁ顔をちかずけてねぇ」
パステルが鬼の首でも取ったようににーっと笑った。
「そそれは」
マリーナのどもった言葉を無視してトラップが言った。
「大人のすることに決まってんだろ。まっ、お子様のおめぇにはわかんないだろうけどな」
「むーっ」
『むーっ』と怒る人も珍しいかもしれないがパステルはどうやって怒ってもかわいいから良いのである。
「お子様のくせに大人の話に首つっこむなよ」
「お子様じゃないもん!!」
「っへ、どーだか」
トラップの遠慮のない言いようについていけることはないパステルの目の端には滲むものがあった。
「もういいよお..」
「しかも俺とマリーナの事はおめえには関係ねーだろ。んな事考える前にもう少し大人になりな!っへ!ばーか」
カッチーン!!
と来たのはパステルたちだけはなく、多くのパステルファンもだろう。
トラップくん、言葉は慎むように。
「ヒ、ヒックだ、だってうう...」
ひどいトラップのせいでパステルが泣き出してしまった。
トラップにかなうのはマリーナやリタだけだろう。
あまり近づかない方が良いと思われる。
「ギャハハハ!!トラップパステルを泣かしたらひどいめにあいますよ」
当然とも言うべきことをキットンが言ってくれた。
さすがはキットン!
きっと、スグリさんにも会えるさ!
「ひどいめってなんだよ」
トラップがキットンの方を向いた時には背後に回っていた。
「こうゆう事だよ」
クレイはロングソードを握り締め・・・はしなかったがトラップの首を絞めた。
「うぎゃ!!ぐ,ぐるしい」
自業自得というか因果応報というか全ては自分のせいである。
「クレイ ..私ってお子様なのかなぁ」
涙をふいたパステルがクレイを見上げた。
「そんなことないさ。こいつの言う事なんか真に受けなくていいよ」
クレイは笑顔でトラップの首を絞めつづける。
笑いながら怒れる人だったようだ。
「そうだね!」
クレイの笑顔にパステルも破顔した。
「〜〜〜〜!!!」
そのころトラップは声にならない叫び声を上げていた。
「あのさ楽しんでるところ悪いんだけどルーミィちゃんたちかえったわよ」
リタの一言に笑っていたパステルとクレイ。呆れていたマリーナが顔を見合わせた。
声にならない叫びを発しつづけているトラップには残念ながらそんな余裕はなかったようだ。
彼らがその後どうしたかはともかくとして。
「ただいまーだおぅ!」
「おかえり、ルーミィちゃん」
と出迎えてくれたのはみすず旅館のおかみさんだ。
「たらいま〜」
今一つ元気のない声でルーミィは答える。
「パステルたちはどうしたんだい?」
年の功というべきか、おかみさんはルーミィの寂しそうな様子にパステルたちと何かあったのかと思ったようだ。
仕事の手を止めて、ルーミィに声をかけた。
「ぱーるぅたちはルーミィと遊んでくれないんら…」
ルーミィのサファイヤブルーの瞳からは今にも涙が零れ落ちそうだ。
「どうしてだい?」
おかみさんはあくまでも優しく尋ねる。
「ぱーるぅは、ルーミィがきあいなんら・・・。」
ルーミィがうつむいた拍子に涙が床へとこぼれた。
水滴は1つ2つと床にしみを作る。
「そんなわけないじゃないか」
おかみさんはルーミィの涙をぬぐって、優しく方に手を置いた。
「おかみさんっ!ルーミィかえって来ていますか?!」
パステルが勢いよく扉を開けながら叫んだ。
「ほら、ルーミィちゃん。パステルが帰ってきたよ」
おかみさんはルーミィを扉の方に向かせ、その小さな背を押した。
「あ!ぱーるぅだあー!ぱーるぅ!」
「ルーミィ!心配したんだからね!」
「ごめんあしゃーい。」
そう言って、パステルとルーミィはひしと抱き合った。
(いいなあ、ルーミィ......。)
そんなことを思いながら二人をじーっと見つめる人が扉の陰にいた。
パステルと抱き合うルーミィをうらやましがる、といえば。
やはりその人物はクレイだった。
「もの欲しそうな顔してんなよ」
その横から声をかけたのはトラップだ。
さきほどまでクレイに首をしめられていたはずだが、けろっとしている。
「べ、別に。そんな顔してないぞ」
「してるわよ?」
トラップの奥からはマリーナだ。
「ルーミィから取り返せば?」
トラップがにやにやしながらクレイをつついた。
「そんなことできるわけないだろ。おれがパステルを独り占めしたらルーミィも寂しいだろうしな」
「そーだおう!だあら、くりぇーは、ぱーるをとっちゃだめだおう!」
抱きしめられたままのルーミィはパステルをしっかりつかんで自己主張をした。
「ル、ルーミィ。クレイは取ったりしないよ」
パステルはルーミィを抱く腕をゆるめて、困った顔でルーミィをなだめた。
「ああら、じゅーぶんすぎるほどにクレイはパステルを取っていると思うけどぉ?」
にやにや笑いながら言うのはマリーナだ。
「「そんなことないよ!」」
顔を赤く染めたクレイとパステルは仲良く同じ言葉を口にした。
「じゃあ、パステルを頂いちゃおうかしら?」
にやっとしてマリーナはさっとパステルに近づく。
「なっ…」
クレイは額から汗を流して絶句した。
「えっ…」
「おい…」
パステルはもちろんのこと、トラップまでもがマリーナに真剣な顔を向ける。
「や、やぁねぇ。冗談に決まってるじゃない。トラップ、あんたまでそんな反応しないでよね」
ちょっとした冗談をわかってもらえなかったマリーナは焦りつつ手を振った。
「お前なぁ…」
呆れたようにトラップがつぶやいた。
「なによぉ」
マリーナはすねて、トラップに顔と体を近づかせた。
「な、な、なんだよっ////」
めちゃめちゃわかりやすく動揺するトラップだった。
「あら、照れてるの?」
マリーナはわざわざわかりきったことを確認する。
にやっと笑うマリーナはやはりトラップによく似ている。
「照れてなんかいねーよっ!////」
「それはど〜かしら?しっかり照れてるんじゃないのぉ?」
この二人の愛情の確認方法はからかうことのようだ。
「パステル、二人の邪魔しちゃ悪いから向こう行こうな」
あてられた格好になったクレイはいつの間にかパステルの隣にきていた。
「そうだね。行こう、ルーミィ。おかみさん、ありがとうございました」
パステルはルーミィの手を取って、おかみさんに丁寧に頭を下げた。
(二人っきりになれると思ってたんだけど…。やっぱ独占したいのかもな)
クレイの内心の思いはパステルには届かない。
「クレイ?どうかした?」
「い、いや・・!行こうか」
パステルの無邪気な笑顔を見たクレイは自分の独占欲を押し隠し、笑顔を向けた。
「あら?二人ともいっちゃうの?」
マリーナが行こうとしたパステルたちに声をかける。
「だって、邪魔になるし…。ね、クレイ」
パステルはクレイの服のすそをひっぱった。
「そう?そんなことないのに」
マリーナは不満そうな口ぶりだ。
「でも…ねぇ?」
「そうだよ…なぁ?」
パステルとクレイは目線を交わしつつ、うなずきあった。
「わたしが邪魔してるみたいじゃない…」
「ま。いーじゃねえか、別行動っつうことで」
なんとなく膨れたマリーナを取り成すようにトラップがその華奢な肩に手を置いた。
「とりゃ〜v」
と、突然パステルの手から離れてルーミィはトラップにしがみついた。
「あん?どうしたルーミィ」
「ルーミィ、とりゃーといる」
「あぁ? またかよおめぇはよぉ。さっきパステルがいいって言ってたじゃねーか」
「ルーミィとりゃーがいいお!!」
「なんでおれになついてんだよ。ま、いっか。飯でも食いに行くか?」
トラップとルーミィはほのぼのとした会話を続けた。
「えっ…」
そんな二人の会話にマリーナが驚きの声をあげた。
驚きの声というよりも不満の声かもしれない。
「くりぇーとぱーるぅもだお!」
「みんなでかよ。あー、まぁいいんじゃねぇ? どっかの誰かさんは残念かもしんねーけどな」
トラップは意地の悪そうな目でクレイを見た。
「お、おれじゃないぞ」
動揺もあらわにクレイがどもりながら答えた。
「残念です」、と顔に書いてあるようなものではないだろうか。
(私はちょっと残念かも・・・)
クレイとルーミィと三人でいられると思っていたパステルは心の中で素直に思った。
「ぱーるぅ…?」
トラップから離れたルーミィは不安そうにパステルを見上げ、その服のすそをつかんだ。
「ん?な、なあに?ルーミィ」
「ぱーるぅはルーミィといるのいやじゃないおね?」
パステルの内心の思いが少しだけ表情に表れていたようだ。
それを敏感に感じ取ったルーミィが不安になったのだろう。
「そんなはずはないわ。ルーミィが大好きよ!」
パステルはひしっとルーミィを抱きしめた。
「わーい! あいあとー、ぱーるぅ。ルーミィ、おなかぺっこぺこらおう!」
パステルとルーミィは二人だけの世界へと旅立ってしまったようだ。
パステルはクレイのことも忘れたようで、ルーミィの手を引いて猪鹿亭へと歩き始めた。
「結局あの二人が一番ラブラブじゃねえか?」
トラップが「お気の毒様」とでも言わんばかりにクレイを見た。
クレイは何かを言いたそうにしながらも、口を開かなかった。
「『ちくしょー、ルーミィ!いっつも同じ部屋で寝ているくせに!ずるいぞ!持っていかないでくれ!』ってとこかしら?」
「マリーナ、頼むから俺の心を読まないでくれ…」
マリーナがクレイの口調を真似て、心の内を見透かした。
それに対してクレイが情けない声を上げる。
「クレイってわかりやすいんだもの」
マリーナにかかればトラップは言うまでもなく、クレイやパステルも十二分にわかりやすいだろう。
「とりあえず追っかけてったら?」
「う、うーん......。じゃあ、おーい、ぱすて......」
トラップの助言にクレイは情けない顔のまま、情けないほどの自信のない声をパステルに向かって投げた。
「ぱーるぅ、ルーミィ、おなかぺっこぺこらおう!」
と、タイミングよくルーミィがパステルの隣で大きな声をあげ、当然のようにクレイの声はかき消された。
「・・・・・・・・・・」
思うところが色々あるようだが、それでもクレイは何も言わなかった。
「わたしも。みんな、早く行こうよ」
パステルはそこでようやく他のメンバーが来ていないことに気がついたのか、クレイたちを振り返って急かした。
急かす理由はもちろんルーミィがお腹を空かせているからであって、クレイがどうこうということは露ほども含まれていない。
「・・・・・ルーミィにまけてっぞ、オイ・・・」
「・・・パステルと並んで歩いたら?」
トラップとマリーナはなんとも言いがたい表情と声音でクレイに言った。
「そうだな。とりあえず、猪鹿亭で、パステルの隣の席、くれよ」
クレイはパステルに声をかけられたのが嬉しかったのか、多少自信を回復したようだった。
そして、パステル達は猪鹿亭へ入っていった。
パステルが席についたら、ルーミィもすぐにパステルの隣の席に座った。
「くりぇーはここに座るんだお!」
ルーミィはそう言ってパステルから一番離れている席をゆびさした。
「・・・・・・(いやがらせか?ルーミィの奴・・;;)」
トラップはさすがにクレイが不憫になったようだ。
心の中で泣いてくれるなんてやはり二人は立派な親友だ。
「おれはこっちに座るよ」
クレイはルーミィの声が聞こえなかった振りをして、ルーミィとは反対側のパステルの隣に座った。
「くりぇーあっちらおう!!」
ルーミィが眉毛を寄せてイスの上に立ち上がり、小さな手で遠くのイスをさした。
「いーかげんにしとけってルーミィ。ほれクレイも早くすわっちまえよ」
トラップはルーミィを無理矢理座らせて、クレイの肩をたたいた。
「ぶぅ! じゃあとりゃーはルーミィの横らおう」
「じゃあボクはどこデシか?」
それまでずっと黙っていたシロちゃんがようやく発言権を得たようだ。
「ルーミィの下ら」
なぜか指揮をとるルーミィによって、座る場所が決まってしまった。
「わたしはトラップの隣ね」
マリーナが最後に残ったイスに腰をおろした。
「なんにするか決まったの?」
全員が座ったところで、タイミング良くリタがパステルたちのテーブルに声を寄越してきた。
「いつものやっすーいやつ人数分だろ?なあ?パステル」
トラップは意地悪そうに笑いながらパステルを見た。
パステルたちパーティが貧乏である原因の一端が自分であることをちっともわかっていないような口ぶりだ。
「くっ。そ、そーよ」
パステルは内心で(ま、負けないぞぉー!)と思いつつ、悔しそうに言い返した。
なにもパーティの貧乏はパステルのせいではないはずであるのだが。
「相変わらずお金ないのね、それなら私がはらってもいいわよ?」
「マジ!?マリーナ」
マリーナが呆れながら言った言葉に即座に反応したのは、いうまでもなくトラップだ。
相変わらずお金やお宝のこととなると普段はしないような真剣な顔つきになる人だ。
「へー、たまにしかあえないコイビトに払わせるんだー」
ニヤリと笑いながらパステルがお返しとばかりにトラップに言った。
「たまにしか金まともに払えねえ財務担当さんにいわれたかねえなあ」
「はいはい。やめろって。各自で払えばいいだろ」
ジョブをはじめたパステルとトラップをクレイが止めた。
「そうね。それがいちばん平和ね」
マリーナが苦笑しつつ、同意した。
「げ!オレ、20Gしかねえのに......」
いかに猪鹿亭が安いとはいえ、20Gしか持っていないというのは自活している人としては問題があるだろう。
20Gで食べられたとしてもその後はどうするつもりだったのか気になるところだ。
「またギャンブルでもしたの? こりないわよね、あんたって」
「・・・・・分かってるような口きくじゃねぇか」
「あらあ?せっかくあんたの分も払ってあげようとしたのにそういう口きいていいのね?」
「ほどこしなんかいらねーよ」
トラップとマリーナは口げんかしかしないようだ。
気が強いのも良いが、ほどほどにした方がいいだろう。
「20Gじゃ食べれるものはないよ」
二人の言い合いにリタが口をはさんだ。
「そこをなんとか!」
トラップは今度はリタを拝み倒しにかかった。
「残念だけど、無理よ。だって、あんたこの間のビール、ツケにしてるんだから。水だけなら何杯でもタダでいいわよ」
商売人のリタは冷たく言い放った。当然である。
「あんた、その生き方は変えた方が身のためよ」
「・・・じゃ俺帰るわ。金ねえし」
リタについでマリーナまでもが温かみのない言葉をかけたために、トラップはすねたようだ。
協調性や妥協を知らない人である。
「あんたねぇ、わがままなのもいい加減にしなさいよ。せっかくみんなで食事ってときに」
「ケッじゃあその「わがままさん」は退散してやるよ。そっちで勝手に仲良くやってろ」
マリーナがたしなめようとしたが、トラップは捨て台詞を残して出て行ってしまった。
「歩き回ってもおなかへるだけなのに......」
パステルがトラップの出て行った方向に目を向けて、心配そうにつぶやいた。
「あいつはもう…。ごめんね、みんな。食べててね」
マリーナはそう言ってトラップの後を追っていった。
「ええ?ち、ちょっと、マリーナ!」
急に立ち上がって出て行ったマリーナにパステルは慌てて声を出したがマリーナはそのまま出て行ってしまった。
「マリーナなら心配ないし。そのうちもどってくるさ」
驚いているパステルとは対照的にクレイは軽い調子だ。
「そうだよね。わたしもそうやって言われたいな」
確かにマリーナはしっかりしている。自分と違って迷子になることもないだろう。
そう思ったパステルは浮かしかけていた腰を椅子に戻した。
「そうやってって?」
クレイがパステルの言葉をとらえて聞き返した。
「「心配ない」って言われたいなって思ったの。わたしがどこかに行ったら迷子になるんじゃないかって心配されるし。本当に迷子になるからしかたないんだけどね」
「あはは・・・。でもパステルはその分頑張ってるだろ?それにパステルがもし迷子になったら俺が探すしさ」
「ありがと。えへへ」
二人の周りがピンクに色づいてきた。
テーブルの上に置かれたクレイの手がパステルの方へと伸びる。
「おーいお二人ともー?水を差すようで悪いけどそろそろ注文きいていい?」
ピンクの靄がかかっていたその場の雰囲気を変えるようにリタが言った。
「ご、ごめん、リタ! えーっと、えーっと。C定食のニグルの蒸し焼きにしようかな」
「おれはA定のミケドリアの串焼き」
パステルは慌てたように、クレイは慣れたのか意外に冷静に注文をした。
「ルーミィ、ぱーると同じだおう!」
雰囲気を気にしないルーミィはいつものように元気に叫んだ。
リタは飛んできた注文を聞き取り、厨房の方に注文を投げた。
「トラップ達の注文はどうしよう?すぐ戻ってくるかなあ・・・」
「ま、後にしようぜ。冷めると困るしさ」
「う、うん。そだね」
それを聞いたリタは、ちょうど店に入ってきた客に対応するためにパステルたちのテーブルから離れた。
「ったっくあいつはよぉ…」
と、いつからいたのか壁にもたれていたトラップがつぶやいた。
「うわ?!トラップいつからそこに・・・、マリーナはどうしたんだ?」
さすがに誰もトラップに気づいていなかったようで、テーブルにいた全員がトラップに驚きの目を向けた。
全員の思いを代表してクレイがトラップに訪ねると、
「しらねーよ」
という返事が返ってきた。
「ひっどーい! 探しに行ってきなさいよ。トラップを迎えに行ってくれたんだよ?」
「あっそ。おれ、みすず旅館に帰ってるから」
パステルが抗議の声をあげたが、トラップは一言、言い残してささっと店を出ていった。
「トラップってば何を考えてるんだろ」
パステルが理解できないというように眉を寄せた。
「奴も色々と思うことがあるんじゃないか。明日でマリーナも帰るしさ、寂しいんじゃないかな」
「そだね」
今日はあまり二人きりで時を過ごせたわけでもないだろうし、気が立っているんだろう。
パステルはそう考えてクレイに笑いかけた。


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