「もうすぐだね」
「あぁ」
あいにくの曇り空で星も見えない夜だけど、今日は特別な日なんだ。
12月31日。もうすぐ時計の針が重なる。
もうすぐ、新しい年がやってくる。
シルバーリーブでは1月1日の午前0時になったら花火を打ち上げる風習があるんだ。
シルバーリーブだけじゃなくて、他の村とか街でもあるんだけどね。
みんな、その瞬間を今か今かと待ちわびてる。
パーティのみんなとマリーナで外に出てきたんだけど、わたしは今はクレイと二人。
ルーミィたちと一緒だったんだけど、クレイに呼ばれたんだよね。
「二人で向こうに行かないか」って。
それで、ノルにルーミィたちを頼んで、みんなとは少し離れた場所にやってきた。
「今年も色々あったけど、みんなが無事に年を越せそうで良かったよ」
「だね。それが一番だもん」
「来年もいい年になるといいな」
「うん。いい年にしないとね。だいじょぶだよ」
周りの人たちも口々に今年の話をしてる。
暗い夜の中で、家族と一緒だったり、友達同士だったり、恋人たちもいるんだろうな。
その中にクレイと二人でいるのはなんだか照れるけど、クレイとならいいかなって思うんだよね。
「はじまるぞ」
クレイの手が、わたしの手を握った。
驚く前に、花火があがった。
二色の花が夜空を彩る。
「あけましておめでとう!」
「おめでとう」
みんながいっせいに言葉をあげる。
うるさいくらいに騒がしくなっていたけど、わたしには花火が上がった直後に聞こえた言葉で頭が真っ白になっていた。
他の誰にも聞こえなかったと思うような小さな声。
わたしに聞こえたこと、わかってるのかな。
聞かせたかったのかな、聞いちゃいけなかったのかな。
「パステルと、来年も再来年もずっと、こうして花火が見たいんだ」
呆然と見上げていたわたしの意識が、クレイの声で浮上してきた。
「うん。わたしも、そうできるといいなって思うよ」
クレイの手を握り返した。
新年になったと同時に聞いたクレイの想い。
その想いは、わたしの持つ想いと同じものだった。
「今年もよろしくね、クレイ」
「今年からよろしくな、パステル」
END
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