天使の安らぎ


クリスマスイブって、天使たちもパーティするの?
だって、地上がみんな、お祭り騒ぎだったら、羨ましく思わないの?
…寂しく、思わないの?

     *

エベリンの街は、クリスマス間近でいつもよりも華やかだった。
あちこちのお店が─うちの店も例外ではなく─赤と緑、金銀で装飾を施されていて、 歩く人たちの笑顔も煌いて見えた。
プレゼントを買う人、パーティの準備に余念がない人、決めるための衣装を選ぶ人。
…実際、うちの店にも、そんなお客様が結構入ってる。
古着とはいえ、うちの品物はただ安いだけの変なものなんて、置いてるつもりない し、それを知ってくれてる人たちが来てくれてるのだ。
あと、パーティのイベント用に安く衣装を揃えたい、なんて人もいて。
ともかくも、イブの当日までこの混雑は続くはず。
瞳をキラキラさせてドレスを見定める人。
パーティの趣向にもっとも相応しい衣装を熟考する人。
みんなの顔が、とっても素敵。
…特別予定のない、私まで。なぜかわくわくしてきたりして。ついつい、お客さん の相談に乗っちゃったりして。結構楽しんでる、自分がいる。

そして、イブの日。
「ありがとうございました!」
閉店時間にはちょっと早いけど、ちょうどお客様も途切れたんで、これで店じまい。
結構ギリギリまでお客様がいて、疲れたけど満足感がある。
「…はぁ」
今日はアンドラスに、いつものメンバーのパーティへ誘われてたりするんだけど。
本当は、一緒に過ごしたい相手なんて、決まってるの。
ただ、私が素直に「来て」なんて言えないし。あいつもそんな、ガラじゃないって わかっては、いるの。
…でもね。
逢いたいんだ。私、あんたに。

「よぉ」
「…!」
何でいるの?
そう言いたいのに、声が出ない。
「おめぇを連れ出しに来たんだ。言っとくけど、俺だけじゃないぜ。クレイもパス テルも、全員こっち来てっからな。アンドラスの招待で」
「……」
「ほら、おめぇもとっとと支度して、パーティ行くぞ」
「…」
「何だ? おめぇ、俺の言うこと…お、おい?」

何よ…。仕方ないじゃない。
あんまりびっくりして、あんまり嬉しくて。

「…おめぇ、泣いてる暇あったら早く支度しろって。みんな待ってるぜ」
「…うん」
「いつもみんなのために、って頑張ってくれるおめぇにさ、こんな日ぐらいは笑顔 で過ごしてもらいたい、ってさ。アンドラスの奴、柄にもなくいいとこあるだろ?」
「うん」
「さ、行くぞ」

     *

クリスマスなんだから、天使だってパーティするわよね。
滅多に逢えない人に会えて、嬉しかったりするわよね。

だって、今夜はクリスマスイブ。






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