掌の上の幸福


 見上げた空は、どこまでも高くて。
 果てしなく、遠く思えて。


   *


ひたすらに、高みを目指し、もがき続けている自分。
馬鹿なことをしているかもしれないって、自覚がおぼろげにあって。
周囲の心配とか、同情とか、そんなものからは目を背けて。
我武者羅に、でもやっぱり迷って。
そんなとき。
君の言葉が、世界を変えた。

「クレイは、クレイでしょ?」

悩み続ける俺に向かって、いつものようにふんわりと微笑んで。

「偉大なご先祖様とか、凄いご家族とか、関係ないよ。
 クレイが本当に、目指すものって、何?」
「………俺の目指すもの………」

呟く俺に向かって、頷いて。

「クレイにはクレイの、大事なもの、あるでしょう?
 精一杯頑張って、それを掴もうよ。ね?」

手の届かない、青空ばかりじゃなくても。
ちゃんと自分の近くにだって、幸せって、あるんだよ。

パステルは。
そう言うと、空を見上げて目を細めた。





結局は。
ここに、自分の大切なものがあった。

俺の隣で微かに揺れる、金茶色の長い髪。
無意識に手を伸ばし、指に絡める。

「!? な、何?」

うろたえるパステルも、引き寄せて。

「───ありがとう」

そうっと囁くと、彼女は真っ赤になって、硬直した。
あんまりその様子が、可愛らしいから。
俺はつい、微笑んだ。


   *


 ここに。
 大切なものが、確かにある。
 もう、空に焦がれずともいい。

 絶対に、この手は、離さない。







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