ほら、言葉が走りだす。
ほら、心がうずきだす。
こんなのは、今このときだけ。
*
「はい、パステル。速達だよ」
郵便屋さんが、にっこり笑顔で手渡してくれた、シンプルな封筒。
もうすぐクリスマスを迎えるガイナの街は、昨夜降った雪にふんわりと覆われている。
我が家の前も、白く覆われて。足音は、今彼がつけたものと、早朝の新聞配達の少年のものだけ。
「ありがとう」
私が言うと、郵便屋さんはにっこり笑って。
「良いクリスマスをな」
白い雪の上、新たな跡をつけながら去っていった。
「誰からだろ」
封筒の裏書を見て、視線が止まる。見慣れた字と、いつもの署名。
「……クレイ!」
慌て気味に、封筒を開封して。わたわたしながら、手紙を読んだ。
『前略、パステル様
ガイナもきっと、雪景色だろうな。ここ、ドーマも同じだよ。
恋人のいる連中は皆ホワイトクリスマスだ、って騒いでます。
───かくいう俺も、だけどね。
ここ一ヶ月程はかなり忙しかったけど、何とか予定どおりに
クリスマスまでには全てが片付きそうです。
そうしたら、まっすぐガイナへ向かいます。
早く、パステルの美味い料理をたくさん食べたいです。
一日も早く、会いたい。君もそうだと、信じています。
クレイ』
「……クレイ」
大好きな名前を、口に出して呟くと。
愛しさがあふれ出そうになった。
家の用事だとかで、トラップと一緒に一度帰ったクレイ。トラップはクリスマスまでドーマで過ごし、クレイはこちらに来てくれる、と前の手紙にも書いてはいた。
でも、それが現実味を帯びて。
本当に、嬉しくて。
───何だか、じんわりと。温かいものが、目に溢れてくる。
「ぱーるぅ、どうしたんかぁ?」
「パステルお姉しゃん、どうしたんデシか?」
私が涙を流しているのを見咎めた、ルーミィとシロちゃんが。心配そうな表情で、覗き込んでくるのに気づいて。
「あ、ご、ごめん、な、何でもないのよ。ちょ、ちょっと目にゴミがね」
慌てて涙を拭いつつ、二人に言い訳をしてから。
「あ、そ、そうだそれよりね、クレイがクリスマスの頃にこっちに来られそうなんだって」
たった今手紙で得たばかりの情報を、二人に教えた。
「うわぁーい!」
「良かったデシ、もっと楽しくなるデシ!」
ルーミィたちも、ぴょんぴょん飛び跳ねて。嬉しさを表現しているらしかった。
*
ほら、言葉が走り出す。
ほら、心が躍り出す。
こんなのは、あなたのときだけ。
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