「例えばこんな王子様」


「さよなら」

思わず、零れでた言葉。

さよなら、私の気持ち。
今まで心に押しこめて、見てみぬふりをしていた私の気持ち。

「パステル」

こんな一日にも終りがやってくる。
もう、こんな時間だ。

「どうかしたのか? 何かつらい事でもあったのか」

どうして、貴方がそれを言うの?
なんだか無償に腹が立った。

…何もかもがバカみたいだ。

「出かけようか」

クレイがいきなり手を引く。
どういう事?
彼女がいるなら、彼女といけばいいじゃないの。

「ちょっと、出かけてくるから」
クレイが皆に声を掛けている。
皆は、特に何も言わず送り出してくれた。

「あのさ、渡したいものがあるんだ」
クレイは何かを私に差し出す。
「これは?」
小さな指輪。それはアメジストがはめ込まれた銀のリング。
シンプルなものながら、その分すっきりしていてセンスのいい品だ。

「これ。店で見つけてさ。パステルにあうかなと思って」
はにかんだ、笑顔でクレイ。

「どうして」
こんなものを渡すの?

「だって。彼女がいるんでしょう? なんで私に渡すの?」

「は?」
クレイはびっくりする。

「彼女って誰の事だ?」
「だって、一緒にいたでしょう。女の子と」

「ああ! 彼女か。ついてきて欲しい所があるというから、いったんだ。そういえば結局なんの用事か分からなかったな。その時、パステルのプレゼント選びに付合ってもらってさ、はは。おれの用事に付き合わせちゃったな。後日謝らないと」

唖然とした。
悩んでる私はなんだったの?


「んもー! ばっかみたい」
「おれ何か悪いことしたか?」
「知らない!」

…鈍感過ぎる彼は、付合うのが大変だけれど。
でも私にとって、最高の王子様。

END





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