チョコを刻んで
お湯をわかして
ボウルにチョコを入れて
ボウルをお湯に入れて
湯せんしたらすぐに溶ける
ウイスキーでも入れようかしら
型に流し込んで固まったらトッピング
箱に包装紙にリボンを用意して
手早く包んでリボンをかけた
世の女の子たちは
毎年こんなことをしてるのね
出来上がった包みを前に
わたしはそんなことを考えた
今まではドーマの家かエベリンか
食事の用意しかしてなかったから
甘いお菓子に甘い想いを込めてなんて
わたしには一生縁がないと思ってたのに
しかも相手はあいつなのよね
自分の行動に自分で一番驚いてる
失敗したのよ
作りすぎて
義理よ、義理
いくつもの言い訳を思いつくけど
どれもうまくないわよね
仕方ないから素直になってみようかしら?
数日前の朝
乗り合い馬車に乗り込んで
高鳴る胸を持て余しながら
黙って外を見つめてた
あいつはなんて言うでしょうね
迷惑がられたりしたら
とっさにごまかせるわよね?
襲ってくるのは悪い予感ばかり
強気になれる要素がないから
不安はどんどん増すばかり
シルバーリーブにやっとついて
あいつを探して歩き出す
素朴なわたしの見知らぬ町
そこがあいつの第二の故郷なのが
少し寂しくなってきて
また不安が襲ってくる
帰ろうかな
ぽつりとそう思った時に
なにやってんだ?
その声に思わず震えた
あいつが傍にいるのに
顔も上げられなくて
なんだよ、どうした
体調でもわりぃのか?
心配そうに手を伸ばす
あんたは素直じゃないけれど
実は優しい心配性
平気よ、大丈夫
あんたの声を聞いたら
不安はどこかに隠れてしまった
あんたにこれをとどけに来たの
わたしは包みを手渡して
あいつの顔をしっかり見つめた
驚いた顔をして
しばらく考えて
思い付いたのか、軽く笑って
するするとリボンをほどいた
そこにあった甘い香りに
満足そうに微笑んだ
嬉しそうなその顔を
見ただけで体温が上がった
さっそく一つを口に放り込んだトラップは
さすがに好みの味の把握はばっちりだよな
甘ったるいやつ持ってくる女もいてよ
ちったぁ調べて来いってんだよな
そう言いながら箱を閉じた
答えはそれだけ?
期待したからいけないのね
少なからず落胆した
でも、簡単には諦めないわよ
わたしはくるりときびすを返したけど
後ろからかかった声に足を止めた
おめぇからのもんだったら
砂糖が10倍入ってたって
残らず全部食ってやるよ
振り向くのは恐いけど
きっと振り向けば
そこにはわたしの望むものがあるわ
ねぇ、トラップ
好きだって、言ってくれる?