救い

1.
 小さい頃からおれの周りに付きまとってきたもの。
家柄だとか血筋だとか
・・・・名前
それらのものは、おれに、周囲の過剰な期待を与えた。
それらのものは、おれに、誇りを与えてくれた。

だけど

どうしたって、それに見合った人物になれないと悟ってからのおれは、
・・・・おれの周りは、
変わった。

今まで誇りに思っていたものが、疎ましくなり。
何より
自分自身が、許せなかった。

なぜ、兄達のどちらかではなく
この名はおれに付けられたのだろう
このおれに!
違う名だったら、おれはここまで迷わずに済んだ!!

おれでは駄目だ・・・・・駄目なんだ。

冒険者になるまでは、心に蓋をしてきた思いが、溢れてくる・・・・
このままでは、仲間達まで危険な目に合わせてしまうかもしれない。
迷いを持った冒険者は、長くは生きていけない。
・・・ましてや、おれはこのパーティのリーダーだ。

おれの心は、闇に支配されていた・・・
救いなんて、現れるはずないと、思っていた。

2.
 そんなおれが、君に出逢った。
出逢った初めは、君が光だなんて、気付かなかったけど・・・

 おれが期待通りでなくても、ほとんどの人は優しかった。
だから、せめて、そんな彼らに報いたくて。
彼らの望む、『おれ』を作り上げて来たように思う。
だからこのおれに、あんな激しい感情があっただなんて、冒険者になって初めて 知った。
驚くかな?トラップとあんなに本気で喧嘩したことだって、冒険に出るまで一度 もなかったんだぜ?

パステル、君が教えてくれたんだ。
弱音を吐いても。
本音をさらけ出しても。
どんなに情けなくても。
君は変わらずおれの側にいてくれた。
だから初めて思ったんだ。
・・・今までおれの周りにいてくれた人たちも、そうではなかったか、と。

別に、おれがどんな人間だって、母や兄たち、トラップ達も態度は変わらなかっ ただろう。
おれが、彼らのために、って思ってたことは。
おれの独り善がり、傲慢な思いが作り上げた、言い訳ではなかったのか、って。

・・・・本当の自分をさらして、皆に嫌われるのが、怖かったんだ。

3.
 その答えを見つけだし、更におれの闇が深くなっていったとき・・・
君は、この一言をくれた。

『クレイは、そのままで良いんだと思う!』
悩んでたって。弱さを持ってたって。それでも良いと、君は言ってくれたね。

君のこの一言は、すべてからおれを解放してくれたんだ・・・・
闇は消え、代わりに君の笑顔が、おれを癒してくれる。
その言葉に含まれた、多くの想いを感じることが出来たから。

いつだって、励ましの言葉はもらえたけれど。
おれを、おれ自身を肯定してくれる言葉は、パステル、君が初めて与えてくれた んだ。

だから今ではこうも思うよ。
このおれは、これはこれで本当のおれなんだって。
ただ、激しい感情も持ち合わせて居るんだって。
そんな風に思えるのも、パステル、君のおかげかな。
君と居るときのおれは、本心で居たいと思っている。
自分を隠す必要も、君の側でなら感じないから。
・・・・だから、これも、作り上げた物ではなく、きっとおれなんだ。

少しだけど、自分を許すことが・・・・認めることが、できはじめた。

その後、シドの剣におれは選ばれたみたいだけど。
あの時のパステルほどの効果は無かったな。


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