静かな夜

雪が、一面を包み込み。
空が、氷のような月を抱え。
風が、息を潜めて気配を見せず。
人が、眠りについた頃。

ひとりで眺める、窓の外。
銀の魔法が、世界を染め上げ。
世界に私はひとり。
世界は完全な沈黙。

そのとき。
静寂を破る、静かなノック音。
躊躇いがちな、誰かの声。
入っていいか、尋ねてる。

承諾すると、安堵の溜息。
暖かい気配が、近づいてきて。
私の隣りに、そっと立つ。
そのまま、ふたりで眺める世界。

どうしてだろう。
彼がここにいる、だけなのに。
ひとりじゃない、だけなのに。
心が熱く、満たされてゆく。

ふと、彼を見上げれば。
私を見つめ、微笑んで。
そっと、肩を抱き寄せて。
愛おしそうに、頬を寄せる。

もう、何も聞こえない。
もう、何も見えない。
もう、何もいらない。
この人の、全て意外は。

それは、静かな夜のこと。
月だけが、見ていたこと。

《終わり》


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