SIDE

 コンコン。
 「クレイー、起きてる?」
 パステルがひょっこりと顔を出す。俺は寝転がったまま、うーんと声を出した。
 ・・・そばに来て。
 パステルはふっと苦笑すると、俺が寝ているベッドのわきにひょいと座る。
 髪を優しくなでる感触。
 布団越しに伝わる、微かなパステルの体温。
 そんな他愛もない、きっと彼女は意識さえしていない事。
 それがとてつもなく幸せで。
 「・・・クレイ?起きてるんでしょ?」
 顔が笑ってるよ、と指摘されて、俺の笑顔は照れ笑いへと変化する。
 「・・・おはよう、パステル」
 寝転がったまま目だけでパステルを見上げる。
 「おはよ、クレイ」
 にっこりと笑う彼女。
 その笑顔に幾度となく助けられてきた。
 大切な仲間。
 大切な妹。
 ・・・だけど、それだけじゃなくて。
 そんなのはただ、言い訳にしていただけで。
 答えなんか、ずっと俺の中に用意されていたのだから。
 「パステル」
 こいこい、と手招きすると、パステルは素直に体を近付けてきた。
 サラリ、と君の肩から髪が流れる。
 シャンプーの香りが鼻をくすぐる。
 「何?クレイ、どうかした?」
 俺はもう一度目を閉じて、囁くように告げる。
 「ああ・・・うん、ごめんパステル。もうちょっとこのままで居てくれ・・・」
 「え、うん」
 目を閉じているからパステルの表情は分からない。
 今、パステルが何を考えているのかなんて分からない。
 でも・・・この静かな時を共有できて。
 君が少しでも安らかな気持ちになってくれたら。
 君が少しでも安心できているのなら。
 それだけでいい。それだけでいいから。
 「クレイ・・・?また寝ちゃだめだよ」
 ごはん食べに行くんだから。
 愛しい君の声が頭上から降ってくる。
 たとえどんなに短い時間でもいい。
 少しでもいい。君のそばに居たい。
 「クレイ・・・?」
 君が名を呼ぶたび、自分の名前がまた少し好きになる。
 −何もかも、感謝してる。
 −何もかも、

   「すきだよ」

 「−・・・え?ごめんクレイ、聞こえなかった・・・何か言ったよね?」
 「いや、空耳だろ?」
 「・・・そう?」

   まだ、伝えられない。
 俺がもっと、自分の事を好きになって。
 君にも誇れる自分になれたら・・・その時は。
 今までの君への感謝と。
 これからの君への愛を込めて。

   「大好きだよ、パステル・・・」


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