勝負。
モノなんて、本当はいらない。
ただ、来てほしいだけ。
ここにいてほしいだけ。
*
街が、幸せの赤やピンクに染まる。女の子たちの、情熱の色。
「……さあて、と」
今日は、お店も休みだし。裏の仕事も、全然ないので。
私は珍しく、メイクも気合を入れてから。勝負するために、踏み出した。
お世話になってる人たちへの、いわゆる『義理』ってヤツは。
予算とか、一年間の付き合いの程度とか。そういった要素で、案外簡単にぱぱっと決めたりできるもの。
───問題は、本命相手。
特に私の場合、条件が悪い。何と言っても、幼い頃からずっと一緒に育ってきたから。
相手の趣向を知ってるかわりに、こっちの傾向も読まれてる。
そんな奴相手に、毎年勝負を挑むなんて。結構大変だったりもする。
「トリュフは去年あげたし、ガトーショコラなんてさすがに贈れないしなぁ……。うーん、どうしようかなぁ」
真剣なまなざしで、売り場のチョコをひとつひとつ、吟味する。
……ついでに小腹も、試食用のチョコで満たしたりして。
ふと、周囲に目を留めると。あっちもこっちも、神妙なカオ。
みんなやってることは、同じみたい。
そりゃそうよね。これは女の子にとっては、ある意味自分への課題。
相手のことを、どれだけ理解できていて。どれほど喜んでもらえるのか。
皆が無意識に、自分に難題をふっかけて。溜息ついて、悩んでる。
「うぅ〜……」
思わず唸り声なんて、挙げてしまったり。
でも、2時間の粘りの結果。『これだ!』と思える一品に、運良く出会えた。
「よっし!」
心の中で、ガッツポーズをひとつして。私はうきうきと、帰り道を急いだ。
「───あら?」
店の前に、ど派手な原色使いの服。
あまりにも見覚えのある、後姿と赤い髪。
そおっと近づいて、静かに相手の背後に立つと。
「ずいぶんと優雅な格好だな、オイ」
やっぱり気配を察していたらしく、振り向いたあいつが。私が抱えていた紙袋を見て、唇の端を上げた。
「しょーがないでしょ、アンタと違ってアタシは大人なんだから、付き合いってもんがあんのよ」
なるべく嫌味たっぷりに言ってやると、奴は少し強引に私の手から袋を取り上げて。
「へえへえ、んじゃ大人のマリーナさん」
そう、言うと。
「何?」
「大人なら、これぐらいは許せよ、な」
耳元で囁いて、軽い口付けが降ってきた。
*
心の篭った、贈り物より。
素直になれない、貴方が欲しい。