センチメンタリズム


「どこ行くんだよ、マリーナ」
「いいから、黙ってついてきなさいって」
もうすぐ年が明ける。
今年が去年に、来年が今年へと変わる。
今年のことは思い出になる。
今年は過去になってしまう。
それが少し寂しくて、それが少し切ない。
こんな気分のときは傍にいてほしいから、仲間たちと一緒にいたあんたを連れ出した。
勝手よね。
わたしとあんたは何でもないのに。
幼馴染だっていう、ただそれだけなのに。
「花火、見ねーのかよ」
「新年を迎えるのは、そんなにおめでたいのかしら」
今が過去に変わるのに。
みんな、数分先のことで頭が一杯で、今なんて見ようともしない。
何のための今なのかしら。
わたしは、数分先のことなんかよりも、今ここにあんたと二人でいる。その事実の方が大事だわ。
先ばかりを見つめて、今を見ないの?
今は、未来のためにあるんじゃなくて、今のために今があるのに。
「どうだかな」
冷めた目をしてそっけない言葉。
「新年がめでたかろうが、めでたくなかろうが、そんなもんどっちでもいいんじゃねーの。おめぇがめでたくないって思うんなら、そう思ってればいいだろ。そんだけのことだ」
「そうかもね」
「けどよ。花火くらい楽しんだっていいんじゃね?」
振り向いたあんたの視線の先に、大輪の花が咲いた。
夜に似合う艶やかな花火。
周りにいるすべての人が、笑顔で花火を見上げている。
その顔を周りに向けて、「おめでとう」と言い合いはじめた。
「めでたくなくても、こういうのは悪くねーだろ?」
「そうね」
今日から今年がはじまる。
この瞬間に、家族と、大切な人と、友人たちと、一緒に過ごしたいと思う、それは悪くないかもしれない。
あんたと二人だけで新年を迎えるのも、悪くないかもしれない。
名も知らない人たちの笑顔に囲まれるのも、悪くないかもしれない。
こんな風に、一年を始めるのも、いいかもしれない。
「みんながこうしてるからって同じにしなきゃいけねーわけじゃねぇんだから、今年はもうちっと肩の力を抜くんだな」
「そうするわ」
「おれの肩で良ければ、いつでも貸してやるからさ」
「覚えておくわ。来年になってもね」
「まずは今年からだろ」
「来年になっても、忘れてあげないって言ってるのよ。再来年もその次もずっと、ね」


END







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