宣言


 曖昧なものは、いらないから。


   *


今夜だけは、まっすぐに前を見て。
ポーカーフェイスの自分には、蓋をする。
いつも羨ましく思ってる、仲良しのあの子みたいに。
小手先のテクニックなんて放り出して、素直に伝えれば、それだけで。

「………トラップ!」
「あ?」

自分の心臓の鼓動が喧しい、なんて経験、いつ以来?
柄にもなく頬なんて染めて、耳まで温度上がってる。
ああ、こんなの、柄じゃないけど。

深呼吸してから。
大事に抱えてきた箱を、ずいっと前に突き出して。

「これ、あんたに」
「……え?」

「言っとくけど、ちゃんと本命用だからね!心して、受け取んなさい!」

呆けたような表情の相手の反応が、今日ばかりは恨めしい。
思い切って、ぐいっとその手を引っ張って、持っていた箱を押し付ける。

「来月、ちゃんと返事返さないと、許さないわよ!」
「………」

今だ硬直したままの男に背を向け、全速力で駆け出す。
全身が有り得ない程熱を発して、情けないことこの上ない。
ああ、全く以って、柄じゃない。

……だけど。

空を見上げたら、ちらちらと雪が舞い降りて来て。
火照った顔に吸い付いて、少しずつ熱を静めてくれて。
ふわりと心に広がったのは、作戦を無事遂行したことによる、満足感だったから。

こんな経験も、悪くないって、思えた。


   *


 ちゃんと、あんたに伝えたから。
 ちゃんと、あたしに返してよね。

 逃げないから、逃げないで。





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