聖なる日に


「ねえねえクレイ!あれ可愛い!」
そういって嬉しそうに笑うと、指を指したものを棚から取った。
そこらへんの棚を物色していたクレイも、そのパステルの様子に少しだけ微笑んで パステルの隣に並ぶ。
「うーん、確かにかわいいけどさ。俺が持つには・・・ちょっとな」
ピンクと青の小さなテディベアが手にタオルを抱えて、背中合わせにちょこんとすわっている。
背中の部分で縫い合わせてあるらしく、ぴったりとくっついていた。
「それにこれペアじゃないだろ?」
「そうかなあ・・・。うーん。そうだよね」
ちょっとだけつまらなそうに口をへの字に曲げて、パステルはまた棚に戻した。
ここはシルバーリーブにある、安いと評判の雑貨店。
いろいろな小物が売っていて、特に街の女の子達に人気の店だ。
近頃出来たばかりらしく、まだ店内は真新しい。
「それよりコップとか、スプーンとかさ」
『ほら』といってクレイは自分より少し高めの棚からコップを取って見せた。
店内に目立つのが、クリスマスグッズ。
なにより今日はクリスマス・イブ。シルバーリーブも白く染まり、店はクリスマスカラーで溢れている。
去年はパステルとクレイは、別々に、しかも二人そろって内緒でプレゼントを買い、交換したが 今年は二人でおそろいのものでも買おうという事になり、二人雪の中をこうして店まで来たのだ。
「でもコップもスプーンも今のがあるか」
そういうと、クレイはコップを棚に戻してしまった。
予算も決められているため、中々これといったものが見つからずに、かれこれ30分ほど 店の中をぐるぐるしているカップルがここに一組。
「お決まりになりましたか?」
見かねた店員が二人に近寄ってきた。
パステルより少し背の高い、黒髪のロングヘアの女性だ。
「あ、すいませんッ」
慌てて謝るパステル。
女性は柔らかに微笑んだ。
「いえいえいいんですよ。ゆっくりなさってくださいね」
カップルの来訪には今日がイブのせいでなれているのか、そう微笑むとまたレジの方へもどっていく女性。
パステルはほっと胸をなでおろすと、ちらりとさっきのテディベアの横にずらっと並べられているネックレスに 視線を移した。
ペアのネックレスが所狭しと並べられている。
一つ二組あって、アクセサリの部分がわれていて、かさねるとハートは☆の形になるようになっているのだ。
「ん?どうした?やっぱりさっきのぬいぐるみ欲しいのか?」
「う、ううん!違うの!ル、ルーミィとシロちゃんに買ってってあげようかなーって」
「あ、そっか!喜ぶよな!」
ここに来る途中、ペアのネックレスをしたカップルとすれ違った。
幸せそうな、そのカップルに思わずすれ違いざまに振り返り、不思議そうに声をかけるクレイの 声で慌ててクレイに歩調を合わせた。
手をつないでいたから、急にペースが遅くなったパステルが気になったのだろう。
「・・・・・・」
もう一度ペアのネックレスの方を一瞥すると、今度はネックレスが見えないほかの棚の方へと移るパステル。
ペアのネックレスは欲しいが、その前にパステルもクレイもネックレスはすでにしているし、冒険者が 首元にアクセサリーを二個もちらつかせるのはさすがにうっとうしい。
それに付けたりはずしたりが面倒だ。
しかし、冒険者である前に、パステルは女の子である。
やっぱり二人まったく別のネックレスではなく、一つくらい同じ物を身に付けていたい。
そこをゆくと指輪もいいかもしれない。あまりごちゃごちゃしていないシンプルなものならクレイにも似合うだろう。
そんなことをパステルがいろいろ考えあぐねていると、ぽんっと肩をクレイが叩いた。
「さっきからどうした?」
振り返ってすこし顔をあげると、そこにはクレイの笑顔があった。
棚の方を向いて、うつむいて難しい顔をしていれば気になる。
「焦らなくてもいいよな。明日の夜、パーティが終ってからでもいいし。それともパステル、欲しいものあったか?」
「あ、私は・・・。そうだクレイは?クレイは何かないの?」
「俺か?俺は・・・・。マフラーとか手袋とかでもいいけど、冬しかつかわないしな。指輪・・・かな」
「指輪?」
意外な答えに、パステルはきょとんとしてクレイを見た。
頬をかいて、少し照れてみせるクレイ。
「小さいやつ買ってさ、ネックレスに通すんだよ。そうすれば邪魔にならないし。ペアのネックレス買うより安いしな」
「・・・・・・・・」
「パステル?」
顔を赤くして、驚いた表情のまま固まってしまうパステル。
「やっぱり変か?俺が指輪なんて・・」
「ううんそんなことない!!ね、何にする?」
あっというまに笑顔を戻して、嬉しそうに指輪の棚を物色し始めるパステルを、クレイは微笑ましげに見つめた。
指輪の棚は丁度ショーウィンドウがわで、外から見えるし、中から棚の向こうのガラスごしに外も見える。
「クレイ?」
クレイはパステルに近づくとそっと体をかがめ、パステルの耳元で何か囁いた。
他に客もいない。店員からは棚で死角になっている場所。
ぱっと顔を離すクレイ。
「あ。ほら、これなんかパステルに似合うんじゃないか?」
「私・・・」
赤くなった頬を両手で覆って、パステルが口を開いた。
「ネックレス、欲しそうな顔してた?」
困ったような、照れたような、そんな笑顔。
その時すでに、雪がショーウィンドウを曇らせていた。
今日は聖なる日
Merry Christmas・・・


『・・ペアのネックレスは、また、今度な・・』




END


特集の部屋へ