桜の誓い


最近、パステルが独りで村の郊外にある桜並木の所へ出かける。
理由を訊いても曖昧に笑って答えをはぐらかすだけで。 
そんな彼女を見るときは、胸に痛みを感じてしまうんだ。

「今日も出かけるのか?」
 

知らないうちに少し声が硬くなる。 

「うん、留守番お願いね」 

そんな俺の様子に気づいているのか否なのか、笑顔で答えるパステル。
ドアがパタンと閉まり、部屋の中は俺だけになった。

また、胸の痛みがひどくうずいて
気がつけばパステルが向かったはずの桜並木に歩みを進めていた。
  

ざわっと風が吹いて足元の桜の花びらが舞い上がる。
ほとんど葉桜と化した桜並木の真ん中にパステルは居た。 
声をかけようとした時に、彼女が泣いている事に気づいた。 

儚い桜の花びらと、泣いてるパステルが重なってみえて、俺は堪らずパステルをだきしめた。突然の事に驚いた様子だったが、再び彼女の瞳には涙が浮かんだ。
  

「・・・・ずっと不安だったの」  

暫く時間がたって、ふと彼女が呟いた言葉。 

「クレイとずっと居られるのか、いつか離れ離れになるんじゃないかって」
 

その言葉を聴いて、ずっと感じていた胸の痛みの名前に気づく。 
   

  あぁ、きっと俺もずっと不安だったんだ。

自分にも言い聞かせるように言葉を噛み締めながら腕の中のパステルに言う。
 

「ごめん。俺、ずっとパステルを不安にさせていたんだな。けど、」

言葉をとぎらせて、彼女を抱く腕に力を込める。  

「・・・・けど、もう不安にさせないから」
 

この先何があったとしても、ずっと一緒にいよう。 
そしてまた春が巡って桜が咲くころに、再び此処に来よう。

桜色と薄緑色が溢れる景色のなかで 
二人が交わした桜の誓い



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