いつだって、全部分かったように微笑んで、おれを振り回しても素知らぬ顔
そーいうとこが、すげぇムカつく
・・・・・そーいうとこが、好きなんだけど
だめだ、相当あいつにはまってる
my girl
「またケンカしたのか、お前ら」
“また”を強調した呆れ口調に、「悪いかよ」と憮然として頬杖をつく
まぁ、こいつの言うことも分かる
付き合い始めた頃は、幼なじみと恋人との間でぎこちなくて、でも初々しくて。
それが今はと言うと、会うたびにケンカをして、むしろケンカをしなけりゃおれたちじゃねえ、みたいな雰囲気にさえなっているような気がする・・・・・・(何故だ?)
大概の場合は深刻にならずに終わるんだが、今回は少し違った
「いつもなら、何だかんだ言ってもすぐ仲直りしてるじゃん。どうしたんだよ?浮かない顔してるなぁ」
呑気そうな顔で問う、もう一人の幼なじみに恨めしげな視線を送る
一つため息をついて、重い口を開く。
「あいつ、泣いたの」
「え・・・・?」
ぽかん、としておれを見るので、うんと頷いた。
「な? 弱ぇだろ、男は。女に泣かれるとさ」
「・・・・・それは、うん。分かるよ。泣かれると、めちゃくちゃ焦る」
同意見に満足して、また大きくため息をつく
「でもよ、あいつは普段ぜってぇ泣かないだろ?むしろ、泣くもんかって虚勢張ってるくらいだ」
「まぁ、演技以外ではそんなに泣かないよな。子供の時も・・・・・・あっ!お前、そうだ!!お前、昔マリーナのこと泣かせたじゃん」
「はあ?あいつは、昔っから生意気なガキで、泣くなんてしおらしい真似・・・」
「ほら、お前が誘拐されて無事に戻ってきた時」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
思い出した
そういえば、あの時真っ先に走り寄って、わんわん泣いたのはマリーナだった。
あまりにビックリして、すげえどぎまぎしたのを覚えてる
「マリーナが泣いたなんて、きっとまたお前のことが原因だろ?何でケンカしたんだよ」
「・・・・くだらねえことだ」
そう、恋人同士のケンカの原因なんて、大半が犬も食わねぇしょーもないことなんだよ
ドアを開くと、いきなり「何の用?」という、何者も寄せ付けないような冷たい声が返ってくる
「何の用、じゃねーよ。あんな風に泣きやがって」
おれの言葉に、マリーナは肩をすくめて言った
「私が泣こうが泣くまいが、私の勝手」
・・・・・・・・・・・かわいくねえ!!!!
大体なぁ、普通あんなことで泣くか!?
泣くだろぉ、これは〜っつー時にはちっとも泣かずにけろっとしてるくせに。
おれは、半分笑い話のつもりで言ったんだぞ?
この前の冒険の話をして、あいつも目をきらきらさせておれの話に聞き入って。
それから、ちょっと厄介だった罠の話になった
「その宝の前によ、すっげえ罠があったんだぜ。途中まで解除すんのにも、時間は相当かかった。その間にも、モンスターが来てクレイやノルが応戦しててな。それから、後は右にひねるか左にひねるか、二つに一つっつー場面にまできた。あっ、後で分かったんだが、その罠は爆弾だった、結構デカい。だから、ちょっと間違うだけで、こっぱみじんだ。まぁ、そこはシーフ一世一代の賭け!あいつらには黙ったまま、右にひねった・・・・・・・・・・・・・そしたら、セーフ!あんなに緊張したのは、今までで一、二を争う、いや初めてかもしん・・」
得意顔でマリーナの方を見やると、あいつは思いきり憮然とした顔をしていた。
「・・・・?」
勢い込んで話し過ぎたか?
声をかけようとすると、先にマリーナの方が口火を切った
「あんた、ばっっかじゃないの!」
突然の罵倒に、虚を衝かれる。
・・・・・・・・・馬鹿? 今の話をどう聞いたらそうなる・・・・・・・・
「あんだよ、それ」
「あんたはね、シーフなのよ。皆の命預かってんの。それなのに、いつも目先の宝にばっか目がくらんで我を忘れて、皆にも相談なしで勝手にそんなことするなんて。今回はたまたま上手くいったけどねぇ、シーフ失格よ」
あまりにもあまりな言葉に、一瞬唖然となり、その後急に腹が立ってきた。
「おい、お前にそこまでボロクソ言われる筋合いはねーぞ!おれだって、いつもシーフの仕事に命張ってんだ。お節介なんだよ」
ちょっと強めに言い放って、しん・・・と静寂が広がった
・・・・・・・・・・・・・・
ちら、と目の端であいつを見ると、・・・・・・・なんと、泣いていた・・・・・・・
「お、おめぇ・・・・・・・泣くなよっ!!!」
頼むから、と心の中で付け足しながら、必死で泣き止まそうとしたが、
「出てって・・・・・」
「え」
「出てって!!!!!」
・・・・・おれの部屋なのに、何故か追い出された。
「悪かった。ごめん・・・・・」
何で泣いたのかは、まだよく分かんねぇが、とりあえず泣かせたのは事実で。
珍しく素直に謝ったおれに、マリーナは一瞬驚いたようにおれを見た
それから、またおれに背を向ける。
こりゃあ、厄介だな
心の中でため息をついていると、マリーナが何か言った。
「もし、」
「え?」
「もし、あの時左にひねってたら、皆・・・・・死んでたのよ。パステルも、クレイも、ルーミイも、シロちゃんも、ノルも、キットンも・・・・・・・あと、ついでにあんたも。あんたは、自業自得だけど」
こいつ、口が減らねぇ
マリーナがこっちを向いて、凛とした声で続けた
「要するに、あんたが引き金を引くか、で自殺だって心中だって、出来ちゃうの。 そういう時、あんたは色んなことが、頭の中を巡らない? パーティのみんなのことや、・・・残された人たちのこと」
・・・・・あぁ、分かった
こいつの言いたかったことが、やっと分かった気がする。
おれは、とんだ思い違いを
「思い出してよ。一世一代の賭けと言うなら、・・・・私のことを。 あんたに、無駄に死んでほしくなんかない。」
もう泣いてなんかいない。
おれの目を真っ直ぐ見つめ、きっぱりと言いきった
「マリーナ・・・」
胸が熱くなって、思わず抱きしめた。
こいつの身体は、本当にちいさくて、おれがいないと、きっと壊れてしまう
「おめぇを残して、死ぬわけねえ」
「・・・・・・・・言うと思った。さっむーーーい!」
あはは、とおれの腕に収まりながらも、軽く笑い飛ばすマリーナに、一気に脱力する。
何だそりゃ、これじゃあおれはただのバカな気障男じゃねえか・・・・・。
「・・・どーせ、おれはお約束な男だよ」
「うそだよ、シビれちゃったもん」
くすっと笑って耳元で囁く声に、かあっと顔を真っ赤にさせた。
断言する
おれは、この先も一生この女に振り回されるにちがいない
・・・・・でも、まぁ
お互いさま、だよな?
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