「何でいないのよぉ〜!?」
「なんで、いないおお〜??」
みすず旅館にわたし(とルーミイ)の声がこだます。
今夜の食事の買い物から帰って来たら、クレイの姿が全く見当たらないのだ。
「だぁら、言っただろ? クレイの、あのバカのお人好しがせっっかくのクリスマスイブに届け物ことづかってさ。 帰って来んの、25日の夜になるだろうって。」
「何で、クレイ一人に行かせるの? いっつも、いっつもクレイばっかりじゃない!」
わたしが泣きそうになりながらそう言うと、トラップはにっと笑って言った。
「おれは、悪いけど用事あるんだよなぁ〜。てか第一、引き受けたのはクレイだぜぇ? あいつがお人好しすぎんのが元凶なの!」
確かにトラップの言うことは正しいかもしんないけど、でもさぁ・・・・
と反射的にキットンの方を見ると、彼は慌てたように言った。
「わ、わたしはクレイに、付いて行きましょうか?って聞いたんですよ? ね、ノル!」
ノルも、困ったようにうなづく。
「でも、『おれが引き受けたことだから、おれが行く。』って言ったから仕方なく・・・。」
クレイの責任感が強くて、困った人をほっとけない性格は知ってるよ?
でも、でも・・・・・・・・
「何だ。おめぇ、クレイと一緒にクリスマス過ごしたかったんか?」
トラップがにやにやしながら、わたしを見るから、思わず顔が熱くなる。
「ちがうわよっ!! そうじゃなくて・・・・・・、クレイ毎年、毎年不幸が重なって クリスマスも誕生日も まともにパーティーに参加できたことないじゃない。 だから、今年くらいは・・・クレイの好きなもの作って、みんなで過ごしたかったんだもん。」
そこで何も言えなくなってしまった。
・・・・・・わたし、何でこんなに熱くなってんの?
気まずい沈黙になった時 トラップが口を開いた。
「よぉーし、じゃあパステル。 今からクレイを追いかけろ。1時間前に出たばっかだからな。 行き先はホーリッシュ村で・・・」
「ちょ、ちょっと待ってよ。 何でわたしが追いかけることに・・」
わたしがびっくりして聞くと、トラップはいつにない優しい顔で笑った。
「おめえが言ったんだぜ? クレイをひとりぼっちにさせたくないって。」
“そんなこと言ってない”って抗議しようと思ったけど、何でだろう。
トラップに全部見透かされてる気がした。
わたしの知らなかった思いも。
下を向いて黙っていると、ノルが肩をたたいてくれた。
「クレイ、きっと喜ぶ。」
「くりぇー、ひとりでかわいそうだお!」
ルーミイも、励ましてくれた。
何か、気持ちがあったかくなってきた。
・・・・・でも、クレイは今ひとりぼっちなんだな。
そう思うと、胸がきゅんと痛んだ。
「うん! じゃぁ、今から追いかけてみる。」
かくして、わたしはイブの真昼間に旅立つことになった。 ひとりで・・・。
馬車の乗合い所まで、みんなが見送りに来てくれた。
「すれちがっちゃたら、どうしよう。」
思わず不安な気持ちをこぼしてしまうと、シロちゃんがにっこり笑って言った。
「大丈夫デシよ! 今日はクリスマスイブデシ!!」
シロちゃんがそう言ってくれると、本当に奇跡がおこりそうな気がした。
思わず抱きしめると、トラップが「おら、おら。早く行かねぇと、まじにすれ違うぞ!」とどやした。 「じゃ、いってきます。」
馬車が走る。
外の風景が流れて見える。
外は真っ白な雪景色で、ほんとうに一面の銀世界で。
今日は特別素直になれそうな気がした。
わたしはクレイのことを、考えた。
好き、なのかなぁ・・・・・。
ほんとはずっとずっと大好きだったのかなぁ。
クレイのこと、こんなに愛しく思ってるなんて。
気付かなかった。
でも、会いたくてたまらないんだ。
「着きましたよ。」
御者のおじさんの声で、はっと目覚める。
いつのまにか寝てたみたい。
「あ、ごめんなさい。 降ります。」
急いで降りて、雪の上にジャンプする。
ひゃあ〜、寒いっ!!
えーと、確か・・・バンリーさんって人の家だよね。
小さな村だから、すぐ分かった。
玄関の前に立ち、呼び鈴を鳴らす。
「はい? 何か御用?」
上品そうな、おばあさんが出てきた。
「あ、あの すみません!夜遅く。 あの、ここにクレイって人来てますか?」
わたしがそう聞くと、そのおばあさんはにっこり笑って言った。
「ええ、先程着いたばかりで・・・。 今は、何か外を散歩したいとかで、出て行きましたよ。」
「えっ。 こんなに寒いのに散歩??」
「そうなのよ。 疲れてらっしゃるだろうから、あったかいお風呂に入っておやすみ下さいって言ったんですけどね。 『ちょっとだけだから。』ってねぇ・・・。」
「あ、ありがとうございました!!」
わたしはそう言ってすぐに、クレイを探しに行った。
どこにいるの? クレイ。
出てきてよ。
わたしも、ひとりで寂しいのよ?
しばらく探して、半分あきらめかけた時人影を見つけた。
クレイだ。
ただ、ぼうっとつっ立って、空を見てる。
「クレイ・・・・・?」
そぅっと声をかけてみる。
ゆっくり振り向いた顔は、驚きで目が見開かれていた。
そりゃあ、びっくりするよね。
くすっと笑うと、クレイは放心状態からやっと解き放たれて 「パステル」とだけ言った。
「クレイ、あのね・・・・」
そう言いかけたわたしを、彼はいきなり強く抱きしめた。
今度はわたしが放心状態。
“どうしたの?”って言いたいけど、上手く言葉にならなくて。
“いきなり何よ”って言って、離れることもできるのに、それもできない。
ただひとつだけ、確かに思った。
クレイが好き
胸があったかくて、涙が出そうで、ずっと離れたくなくって。
“クレイが好き”
何も言わなくても、お互い伝わってる気がした。
言葉がなくても、こんなに胸がふるえるなんて。
しばらくそうしていると、クレイがわたしに聞いた。
「・・・・さっき、何言いかけたの?」
「メリークリスマス」
わたしがぽつっと言うと、クレイはびっくりして言った。
「え? それだけ??」
「〜〜だって、一番に言いたかったんだもん!! クレイはひとりっきりのクリスマスだし。」
そう言ってむくれるわたしを見て、彼は微笑んだ。
「ありがとう。」
今までで、一番嬉しい言葉。
そんなにも愛しさを込めた瞳で。
2人ならあったかいね。
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