マスターズ


1−7−1 襲者神風

 俺たち四人は校門で別れる。
 自転車は3台、唯のと渡良瀬の、そして伊井さんのだ。
 渡良瀬以外の人はなるべく早く、家にいるようにと、助言があったから寄り道はしない。
 俺は伊井さんを後ろに乗せ、彼女の家へと急ぐ。
 俺と渡良瀬は部活に入ってない、もちろん伊井さんもだ。だが唯はブラバンに入ってたりする、部活は休んでるらしい。
 いつもと違い、まだ日が高い位置にある、それで家に篭るのもどうかとは思うのけど、戦いになりかねないのと比べたら、まだ良いかもしれない。
 本当は流の様子を見に行きたい、それは伊井さんも行きたいだろう、でもそれすら危険が伴う。
「ねえ、どんな料理が好き?」
 と伊井さんが聞いてきた。
「美味しければ何でも」
「張り合い無いなあ、カレーとか、唐揚げとか、そう言うの無いの?」
「唐揚げといえば、コンビニのとき俺の辛口チキン盗ったの、伊井さんでしょ」
「う。やぶへび…。そんな事は気にしないの」
「あれ150円もすんだから、結構財布に響くの」
「だって、美味しそうだったんだもん」
「まあ、あんま気にしてないけど」
「でしょでしょ?ほらこの話はここで終わり」
 自分からそっちの話題振っといて。
 でも、流があんな風になってるのに、こうに話せる彼女はすごいと思う。
 彼女の希望で途中の自販機でいったん止まる、すぐに自販機に向かい、早速何があるか物色を始める彼女。
 280ml缶のミックスジュースに決めたようだ。
「何飲む?」
「今はいいよ」
「私のおごり、チキン一本分ね、だからおごらせてよ」
「それじゃあコーラ」
「了解」
 500mlのペットボトルのコーラを手渡しされる。
 早速キャップを空けて飲む、それを彼女は不思議そうに見た。
「ん、なんか変?」
「え。ああ、あのね、みんな良く飲めるなって」
「飲めないの?」
「刺激が強いのが駄目」
「なんか以外」
「ひどいなー傷付いちゃうぞ」
「だって辛口チキン食べてたじゃ」
「ああ、辛いのは好き」
 矛盾してる気が。
「そう言えば、コーラとかも凍らせられるの?」
「多分、液体だったら何でもできるよ。半液体は駄目だけど」
「へぇ。便利だな」
「私は普通にできるけど、出来ない人は水だけだって話だよ」
 ここら辺が許容量の差なんだろう。
「こうに簡単に凍らせられるのも、レベルが高くないと出来ないらしいし、1リットル行くと結構凍らせられない、て言う話だけど、私は簡単に出来るし」
「なんかスゴイな」
「多分、君も結構すごいと思う」
「え?」
「怜子、マスターウィンドは君以外だと2人知ってるけど。風ってすぐ止むの。この前見せてもらった時、長い時間吹かせ続けられたじゃない」
 この前と言うのは昨日の夜、部屋の中で見せた時の事だろう。あまり強い風は吹かせてない。部屋なの中だからね。
「そうなの?俺は平気で長い時間吹かせられるけど」
「うーん、「発動」させて少ししたらみんな止んだの、でも君のは「発動」させてしばらく吹き続けてるでしょ。すごいなって」
「ふうん、レベル低かったんじゃないの?俺より」
「一人は5レベルだよ」
「俺より高いじゃん」
「うーん、だよね、個人差があるんかなあ、やっぱり」
「だろうね」
 俺は、キャップを閉めた。彼女は飲みきった見たいだし。
「そろそろ行くか」
「うん、そうだね」


1−7−2

 午前中、俺たちは7人で早めの昼食を採っていた。
 篠目さんからの連絡で繁華街の中、歩行者専用道路に隣接してる、小さな飲食店に居る。なかなかオシャレな雰囲気だ。
 ちなみに、七人と言うのは俺、唯、伊井さん、渡良瀬、美咲、篠目さん、そして何故か古雅春花。
「大体の事が解った。やはり薫君を襲ったのは彼だろう」篠目さんが切り出す。古雅春花が紙を配る。
 そこには、1人の男の事が書かれていた。
「城下 諷詠(しろした ふうえい)システム所属、レベルエージェント、マスターウィンド。ここの所個人での活動が多く、システムの依頼をかなり断わっていたみたいだ。本来は中部地方でシステムの依頼をこなしていたらしいが、今はどこに居るかわからない」そこで俺と伊井さんを見る。
「多分二人を襲ったのもこの男だろう。大きな争いになる様だったらシステムは彼に依頼することも多い位、彼の戦闘能力は高い。遠距離からのカマイタチ、竜巻、ダウンバーストなど、非常に避けにくく、なおかつ能力の高さを使っての攻撃を好む。ここ最近の行動、戦闘能力、薫君に負わせた傷跡。それを考えるとやはり彼の可能性が高い」
 そこに渡良瀬が質問する。
「もしかして、神風ですか」
「一部ではそう呼ばれているらしいな、システムの神風」
 神風ねえ。
「それって、通り名ですか?」
「ああ、日本に最強のマスターウィンドが居る。出会ったら最後、簡単に潰される。その後すぐに姿を消すことから、日本の特攻隊になぞられて、神風。なんて呼ばれてる」と渡良瀬が説明した。
「げ、何だそれは」
「まともに戦って勝てる相手ではないな。通り名なんてものは、名が響けば自然に出てくるものだ、あまり気にするほどでもない」
「そう言えば、渡良瀬君もデスサイズなんて呼ばれてますよね」と伊井さん。
 デスサイズ?死神の鎌だって?
「らしいな、興味ねえけど。もう少しまともなのねえのかよ」
 美咲はどうも驚いてるらしい。
「亮介君はシステムのレベルで言えば8はあるだろうからね」亮介は渡良瀬の下の名前だ。
「渡良瀬、何でお前そんなレベルが高いんだ?」
「中学の頃から週一で戦ってればこうにもなるぜ。周りが弱すぎんだよ」
 お前はいつから戦ってんだ。
「話し、それてます」古雅春花が話を戻す。
「すまないな。彼の攻撃はある意味防ぎようがない、風が通らないようなら、カマイタチで切り裂くか、竜巻で吹き飛ばすからだ。「発動」する前に倒すしかないな、彼が右手を左肩に持っていったら「発動」の準備だ。そうなったら常に動くしかない」
「篠目さん少しいいですか?」唯が質問するらしい
「なんだ?」
「それって、襲われたら最後みたいじゃないですか」
「そうかもしれないな、俺でも勝てるかわからない」
 篠目さん、おれ、貴方が最強だと思ってました。
「是清さん、そんな事言わないでよ」
「風を認識するなと言うのは、かなり無理がある。風と言うのは空気の流れだ、つまり風をなくすと言う事は、空気を無くすことと等しい。風による攻撃が当るときだけ空気を認識しなければ良いのだが、マスター・オブ・レコグネイションの「発動」は意外と時間が掛かる」
「くそ、戦うなって言うのかよ!」ああ、渡良瀬がきれた。
 美咲が睨みを効かせ、渡良瀬を黙らし、今日は解散となった。


1−7−3

 夕方になる前なら、繁華街に居れば襲って来ないだろう、との助言で、俺たち4人はしばらく遊んで帰ることにする。美咲、篠目さん、古雅春花は帰った。
 美咲も一緒に遊ぼうと誘ったけど、「ダブりたくない」と、しぶしぶ帰っていった。
「カラオケか?」渡良瀬の発言だ。
「ベターだな」と俺。
「いいねえ、薫あまり行きたがらないんだもん、たまには行きたい」と伊井さん。
「カラオケか・・・。それでいいよ」と唯。
 そう言うわけで、駅の東口から少し歩いたカラオケに行く。
 そこは映画館とゲーセン、それと幾つかの飲食店が一つのビルにまとまった所だ。
 唯とは結構カラオケに良く、そん時はT町に昔っからある所に行く、それなりに安く、何より部屋が広い。
 そして…。
 女性ボーカルで残りは男性二人の三人組、そのグループの全英語詞の曲を歌い終わった、唯。
 二人が驚いてる、そう、彼女はいように歌が上手いのだ。
 決して簡単な歌じゃない、今唯が歌ったのは。
「怜子だってやればできる!」そう言って、次にかかった伊井さんが入れた曲が流れる。
 下手でもなく、上手くも無い。流行の女性歌手の新曲を歌ってるのだが、普通だ。
 勝負は決せられた。唯の勝ち。
 次は俺、唯には定番と思えるPOPsを入れてある。
「翼またその曲なの?」
「唯だってさっきいつもの曲だろうが」
 なんて言い合ってると始まってた。
 俺はまあ普通だと思う。
 渡良瀬は人気のあるロックバンドの定番曲だ。
「渡良瀬、良くそんな高い声出んな」
「任せろ!」そう言ってキーを原曲の設定にする。
 俺は出ないな、つまりはこれで上手いなら、このカラオケは唯と、渡良瀬に持っていかれる。
 そして、渡良瀬は上手かった。


1−7−4

 夕方、俺たちは解散する事になった。
 俺は伊井さんの家へ。
 渡良瀬は唯を送って行ってくれる。
「ねえ、ちょっと遠回りして帰らない?」そう言ったのは伊井さんだ。
「どこ寄っていくんだ?」渡良瀬はやる気の無い風に言った。
「うーん、適当」と伊井さんは言う、少し寂しいのだろうか。
「ねえ、本当はみんなでお見舞いに行きたいの?」
 伊井さんは静に頷いた。
 そっか、幾ら心配してもたりないくらいなのかもな。
「だめだな。そいつ、アレだろ?国立に入院だろ?方向は同じでも日が暮れ始めてる今から行ったんじゃあ、俺たちが危険だ、向こうだってお見舞いに来るかもしれない事はわかってるだろうしな」渡良瀬はそうに真面目な顔をして言う。
「伊井さん、俺も同意権だ、日が高いうちならまだ良いけど」と俺もそれに同意。
「うん、解った、ごめんね皆」
「じゃあさ、皆途中まで一緒に帰ろうよ、ね」
 そして俺たちはいったんT町の方へ向かう。
 目的地は俺の家だ。
 俺の自転車を取りに行く事になったからだ、いつまでも二人乗りは危ない。
 そして、細い路地に入ったときだった。




1−8−1 熱讐再来

 火傷するような熱気が俺たちを包んだ。
 俺は伊井さんを、渡良瀬は唯をかばう様にして後ろへ飛ぶ。
「マスターヒート!」呼んでみるが返事どころか姿が見えない!
「おちつけ根岸、二人とも戦える人間じゃないんだ、俺たちが冷静にならないでどうする」そう、唯も伊井さんも、戦えるような人間じゃない。
 唯はなんの力も持たないし、伊井さんは経験が無さ過ぎる、戦力外かもしれない。
「多分赤井だ、マスターヒートの能力はこの近くじゃああいつしか居ない」
「なぜ赤井が?」
「しるか、ただ、あいつは俺たちから見つからない距離からの攻撃だとすると、かなりの時間が掛かるはず。今は迎撃の用意に備えろ」
 そうか、俺たちが駆けて行って二人が襲われたら危険すぎる。
 渡良瀬は何時の間にか2本目のペットボトルの蓋を開け、地面にばら撒いていた、戦いの準備だろうか。
「伊井さん、ちょっといいか?この水、俺たちを取り巻く用に凍らせてくれ」
 伊井さんは両手を胸の前に出し、右手首を持つ、彼女の「発動」が始まった。
 水はサークル状に俺たちの周り地面を湿らす、そしてそれは凍る。
「二人とも、この地面も見てろ、あいつの「発動」は熱だ、始めたら氷が溶ける」
 なるほど簡易センサーか。
「渡良瀬、手持ちの水まだあるか?」
「今日は日が悪い、3本目は今無い」
 さっき二本目を空けてたから、なるほど。
 俺は背中の方にいる渡良瀬を軽く叩きながらこうに言う。
「まだある訳だな、なら、ここで二人を見ててくれ」少し声を大きくしていう。
 俺は氷のサークルから出た、風は吹かせない。
 少し広い空き地の方に向かう、追って来たならそこであいつを抑える。
 そう言えば、これ使えるかもな。俺は首に掛けていたラピスラズリを外し、強く握る。
 古雅春花からもらった式神が姿をあらわす、それを美咲の家に向かわせた。
 美咲ならわかるかもしれない、本当は古雅春花の家が良いかもしれないけど、俺は知らない。
 俺はひとつ失敗したと思った。ナイフは井伊さんの家だ。
 そして、走り寄って来る足音がした。空き地はもう見えた。
 真後ろの方か、なら。
 俺は急に足を止め、「発動」させた。
 突風は、枯れ木を凪ぎつつマスターヒートを襲う。
 後ろの方、いや直線状にいるなら俺は、空き地よりもその場所で戦いたい。
 後ろを振り向く、起き上がったばかりの赤井を見つけた、そう遠い距離でもない100mもないだろう。
「あん時のお礼、させてもらうぜ!」赤井は吠えた。
 身に覚えがありすぎる、だがそれはこっちも同じだ。
 あの城下諷詠とか言うのがいないのなら、思いっきり風は使える。
 赤井が駆けて来る、早くも勝負を決めたらしい。
 思いっきり向かい風を吹かせてやる。
「単調なんだよ…」
「発動」させはじめたのを見ると、身軽に壁の上にのぼり、そこからまた走ってきた。
 どういうバランス感覚だ。だが、良い的になってるんだよ。
 壁に沿うように向かい風の突風を吹かせた。
 その瞬間高く飛び上がる。
 壁の上面を掃くだけの風、「発動」させる時間が大して使ってない風だ、跳んでる人間を落とせない。
 軽い音をさせて着地すると、そこは俺の目の前だった。
 正拳突きが、俺を襲う。
 両手でガードすると、舌打ちが聞えた。その瞬間視界から消える。
 脛に激痛。
 あいつの足払いは、綺麗にヒットした。
 視界が大きく揺れた。
 俺はやられるのか…。
 そして俺は無意識のうちに「発動」を始めていた。
「っつう!」
 赤井の声がもれた。
 見ると、赤井の肩口から血が出てる、かなりの出血量だ。
 まさか、奴か!
 俺は神風のカマイタチが脳裏によぎった。
 俺は激痛の走る右足を半ば無視して、皆の居る方へ向かう。
「逃がすか」赤井の怒号。
 俺はそれに足を止めた、あからさまに目の前からの気温が違う、その部分はどんどん範囲を大きくする。
 これを進むのは自殺行為か。そして後ろには赤井。


1−8−2

 くそ、まだダメージは俺のほうがでかいな。
 俺は「発動」を始めた、背中が焦がれる。
 風は翼が生えたように俺を運んでくれる、風に戸惑う赤井、そして距離を一気に縮めた俺。
 俺は、大きくひざを前に出し、膝蹴りを食らわす。
 赤井はそれをブロックした、それは俺だってブロックできる、本命は…。
 どこも折れてないな。
 俺は崩れていく赤井を見ながら確かめた。
 こめかみにしっかりヒットした俺の右パンチ。
 風の勢いはまだ消えてないから、かなりの威力だったはず。
 っていうか、何で俺のコブシ折れてないんだ…。
 そして、俺は振り返って皆のいる方へ。
 だがそれはまだ、許しては貰えていなかった。
 足首を掴む手がそこにあった。
「生かせねえぞ」
「どうしてお前落ちてないんだよ!」
「道連れは面白くないが、最後だ」
 奴の左手から直に熱が発せられる、鈍い痛みが走っていく、大気が熱されたときの比じゃない。
 痛みに声がもれた。
 その心の奥では冷静に今の状態を見ている、自分がいた。
 ああ、これは火傷したな。多分酷い火傷だ、その痛みで体が思うように動かない。
 そしてその瞬間後だった。
「そこまでだ赤井」
 そしてふわりと地面に降り立つ長身の男。その周りには軽く砂が舞っている。
 上昇気流だ、それもかなりの風圧の。以前俺が起こした気流の数倍はあると思う「発動」を起こしてる。
 そのなびく白いウィンドブレーカーには見覚えが合った。かけていたサングラスを左手で取る。
「諷詠さん…」すでに「発動」を止めていた赤井がそう言った。
「深追いしすぎだ」冷たく言い放つ、諷詠と呼ばれた男。そう、こいつは間違いなく城下諷詠、エージェントの風使いだ。
 こいつの「発動」はまず右手を左肩に持っていって…。
「翼、今日は君に用があってね。本当はもう少し待とうと思ったんだけど、赤井がやりすぎた。これは僕の落ち度だ。赤井には君たちに手を出すなと言ってあったんだが、僕は少し赤井を甘く見ていたらしい、その火傷、僕の方で何とかしよう」
 俺は城下を睨み付ける。
「そう怖い顔するなよ、僕は翼と話がしたかっただけさ」
「じゃあ何で流を襲った!」
「それは、翼と関係ないところのはずだったんだけどね、君の友達とは知らなかった、知ってたらあんな事はしないさ」
「…お前、何がしたいんだ」
「だから、翼と話がしたいんだ」
「断わる」
「ショウガナイな、じゃあまた今度にでも」
 そう言うと、城下は赤井を起こし抱えると、肩に乗せこの場を離れていった。


1−8−3

「翼…」唯が泣きそうな顔で言った。
 俺の家、で俺は火傷の治療をしていた。
 俺が放った式神で篠目さんが襲われているのを知り、そして美咲のテレパスを聴いて三人が飛んできた。
 今はめんどくさそうに風呂場の水を渡良瀬が運び、それを伊井さんが凍らせて、足を冷やす。
「あ、お母さん?今日ちょっと帰れないね」
「うん、大丈夫だよ」
「はあい、明日はちゃんと帰ります」
 伊井さんが隣りで家に電話してる。伊井さんは今日ここか唯の家に泊まる事になった。
 親と本当に仲がいいんだな、少し羨ましい。
「そう言えば救急箱の中に消毒入ってたよね」そう言ってスリッパを鳴らしながら、唯が取りに言った。
 その取りに行ってる間にドアベルが鳴る。
 唯が方向を変えて、ドアの方へ向かうのが見えた。
「待て唯、お前が出るな!」
 その言葉を無視して、唯が玄関を開けた。
「篠目さん!」そうに言う唯の声。
「篠目さんが来たみたいね」と、横に居た伊井さんが言う。
 そして篠目さんが俺のいるキッチンに来た。
「何で君がこの時間にこの周辺に居たのか聴きたいが、まずは」
 篠目さんが軽く目を伏せた。
「火傷だな」
「はい」
「解った」そう言うと、また静かになる。
 少し時計の針だけが聞える。
「ア…」そうに行ったのは伊井さんだ。
「嘘だろ」俺も驚くだけだ。
 それを聞きつけた渡良瀬まで驚く。
「どうしたの?って、翼火傷!」
 唯は来たとたんに驚いた。
「うん、治っていく」そう、痛みだゆっくりひきながら、火傷が足の先の方から治っていく。
「もう大丈夫だろう」そうに篠目さんが言うと、殆ど完治に近い状態まで、火傷が治っていた。
「もしかして」
「オール・オブ・レコグネイション、認識を操るといったと思うが」
 もしかして、おれの火傷って言う認識を消したって言うのか?篠目さんが認識しなければ此の世に存在しない、でもこんな事が出来るなんて。
「篠目さん、薫の傷ももしかして出来ますか」伊井さんが期待に満ちた風に言った。
 軽く横に首を振った。
「今みたいに治すと言う行動はかなり難しい、そこにあるのはその人の正常な体の一部と認識を変えればいいのだが、薫君は傷の箇所が多すぎて正常な体の部分の認識が取れない、元々無いものの認識が取れないのと同じ理由だ」
「えっと、つまり軽症とか傷の範囲が小さいんなら大丈夫だけど、広い範囲の場合は無理と言う意味ですか」唯がそう言う。
「大まかにはそれで合っていると思ってくれてもいい」
 大怪我は無理でも、どこまでもすごい能力だと思う。



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