ここに、ひとり。


 ひとは、ひとり。


   *


空がすっきり晴れ渡って、雲があんなに高くなって。
秋が、やって来たことを知る。
木々が赤や黄色のパッチワークに彩られて、風もすっかり冷たさを増して。
キットンは、お待ちかねのキノコ収穫の季節到来に、ワクワクしてる。
夏の暑さを十二分に堪能した、他のみんなも、きっと秋は楽しみで。
私は、みんなに合わせて、笑う。
誰にも気付かれないように、と心の中で思いながら。


ひとりぼっちになった時、秋の風は、冷たくて。
このまま凍てついた冬へと、真っ逆さまに落ちていくような気持ちがした。
それはもう、遠い過去の記憶だけれど、今も忘れられなくて。
だから、風の強い夜は、ほんの少しだけ、苦手。
冷たい風を、思い出してしまうから。
「………っ」
心だけが冷たいのに、どうしても飲みたくなった、ホットココア。
だけど、やっぱり心が寒い。


「……パステル、少しいいかな?」
不意に耳に届いた声に、はっとすると、クレイの困ったような顔。
「どうかした?」
首を傾げると、彼はますます眉を顰めて、不意に私の肩へ手を置いた。
あ、と言う間もなく、私の体は引き寄せられて、クレイの胸の中へ。
彼の心臓の鼓動が、響く。
「……何も言いたくないなら、聞かないけど」
クレイは前置きしてから、囁く。
「今の君は、今にも秋風に吹かれて、どこかへ飛んで行きそうだよ」
「………………」
私は答える言葉が見つからず、彼の服をぎゅ、と握って。
彼はそんな私の手に、自分の手を重ねて、続けた。
「できる事なら、ずっとこの手を離さずにいたい……」


   *


 ひとは、ひとり。

 だから。
 ひとは、ひとと、いたくなる。

 ひとりと、ひとりで。
 いっしょに。







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