『ここから、始まる。』

気がついたら、あなたを好きになっていて。
 気持ちが、どんどんふくらんで。
 心が、押さえきれないぐらい溢れてた。
 だから、嬉しかった。
 自分がこんなに誰かを愛せることが。
 …だから、哀しかった。
 どんなに愛しても届かない人に思いを寄せる自分が。
 届かない思いを知っていて、でも捨てられない自分が。
 だから、私は全てを閉じ込めた。
 絶対に、誰にも言いたくなくて。
 秘密のままに、しておきたかった。
 せめて、彼を思う気持ちだけは自由にしたくて。
 …なのに。
 「パステル、ずっと何を悩んでるんだ?」
   なぜあなたが気がつくの?どうして、あなたに尋ねられてしまうの?
   「何、言ってるの?クレイ、何か勘違いしてない?
  そりゃいつも、お金ないから頭が痛いけどね…」
 私は苦笑して見せる。
 でも、彼は誤魔化されない。
 「そんなことじゃないよ。
  どうして…俺への笑顔が辛そうに見えるんだ?」
 「!」
 「他の奴らへは、ちゃんと暖かい笑顔をくれるのに、俺にはどうして笑えない んだ?」
 …一所懸命だったのに。必死だったのに。
 必死で笑おうとしてたのに。
 「俺のこと、嫌なのか?」
 …そんなことない。
 そんなはずない。
 「なあ、パステ…
  …どうして、泣くんだ?」
 溢れ出した思い。
 もう、止められないの?
 もう、隠しておけないの?
 「もう、ダメ…」
 口が勝手に動き出す。
 私の心、私の思い。全てをさらけだすために。
 わかっているのに、止められない。
 「ごめんね、クレイ。
  私…あなたが好きなの」
 「え……!?」
 「でも、言えなかったの。
  あなたにはサラさんがいるし、私たちはパーティだし、それに…
  何より、今の関係でいたかったから」
 「…」
 「だから、必死に隠してた。
  でも…もう終わり。今、言ってしまったから。だから…ね」
 「…」
 「だから…今までありがとう。そして―」
 不意に私を引き寄せる腕。
 頬に当てられる、熱い大きな手。
 私を見つめる、炎を宿した瞳。
 『さよなら』の言葉は、彼の唇に塞がれた。
 「…クレイ、何…するの…」
 「さよならなんて、言わせない。俺は絶対離さない」
 初めて聞いた、彼の声。
 いつもの穏やかさが消えて、情熱的な男の声。
 私を抱き締める腕も、力強くて。
 瞳には、さっきよりも熱い炎。
 「パステル…好きだ」
 「!!!」
 これは夢?
 クレイの姿も、その声も、幻なの?
 「もう、俺も隠さない。誰にも、もちろんお前にも。
  ずっと言わないつもりだったけど…」
 私を抱き締める腕に、力がこもる。
 痛いほどにきつく、強く抱き締められて。
 苦しいのに、どうしてこんなに幸せなの?
 「クレイ…」
 「パステル…」
 お互いの名を呼んだだけで、心が光に満たされる。
 初めての感覚。初めての喜び。初めての思い…。
 「クレイ、私…」
 「パステル、俺…」
   『あなたを、愛してる』
 心のままに、重なった言葉。
 私たちをしっかりつないだ言葉。
 今、ここからが、私たちの始まり。
 


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