「んもう、どうしていつもこうなのよ!」
パステルは今日も怒っていた。というのも、キットンの事である。
風呂には入らない事はもちろんの事、もう一つ問題があった。
変な薬をおきっぱなしにして、それを知らないで使ってしまった人物がさんざん な目にあったのだ。
言うに及ばず、クレイの事である。
「そうは言われましても、使ってしまったものはしょうがないでしょう」
「それはそうだけど……でも!」
パステルにも勿論言い分がある。
「だって、ひどいわ。あれ」
パステルが指さした先には。
頭がぼさぼさで、頭をかきつつ「ぎゃっーはははははは」と笑うクレイの姿。
キノコや薬草を見て大騒ぎしている。
「ひどいとは、どういう意味ですか。それでは、私がだめみたいじゃないですか」
「だって」
あんなクレイみたくないわよ、とパステル。
「もともとなりたい自分になれるという薬を作っていたんですよ。大成功だと思ったんですけどね。どうも、極端になってしまうみたいですね。まあ、改良していけば……」
「キットン!」
「分かってますよ。まずは元に戻せばいいんでしょう。それが、まだ作り方が思い浮かばないんですよ」
「だ、か、ら、今すぐ作って!」
パステルの有無を言わさない口調に、キットンは大慌てで薬の製作にとりかかる。
「はあ……」
パステルはクレイを見ながら、嘆息する。
「見て下さいよ、パステルさん。これは、珍しい薬草ですよ」
彼はうれしそうにパステルに話かける。むろんけたたましい甲高い声だ。
近くで聞いているとけたたましい。
「パステルさん、聞いてますか?」
「……聞いてる」
パステルはすっかり落ちこんでしまった。
……クレイが、いなくなってしまったかのようだった。
「元気だして下さい」
ぽつりと、掛けられた声。
「え?」
「パステルさんはいつも笑顔で元気なのが取り柄でしょう?なのに、落ちこんで いてどうするんですか。おれ、いや私の好きなパステルらしくないですよ」
それを聞いたパステルは、なにかが吹っ切れた気分だった。
「ごめんね」
「どうかしたんですか?」
パステルの言葉にきょとんとするクレイ。
「キットンみたいだからいやだなんて思ってごめんね。クレイはクレイだものね。例え、どんな姿をしていてもね」
「何の事だ?」
「−−−−!?」
もう、先ほどの彼ではなかった。
元のクレイに戻ったのだった。記憶はどうやらないらしい。
「なあ、今のキットンが、どうこうっていうの、何だ?」 「しーらない♪」
パステルは、笑いながら先を歩いていく。
「パステル!元に戻る薬が出来ましたよ!…あれ、もしかしてもうクレイは 戻ってるみたいですね。結局薬は必要なかった、と。ぎゃはははは」
パステルとキットンの二人にきょとんとし続けるクレイ。
そんな彼らを夕方の赤が皆染め上げていった。
end
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