気持ちを知って欲しいから


   どきどきと。
   わくわくと。
   ごちゃ混ぜになる、この気持ち。

   彼女はもっと、迷ったの?

     *

「………。我ながら寂しいもんだなあ……」
昔から、『ずっしり重い』ことなどない財布。
本日も変わらぬ重み、もとい軽さで。
俺はやっぱり今年も、途方に暮れることとなった。

バレンタインデーのあとには。
ホワイトデーがやって来る。

パステルは毎年、心を込めて俺たちに贈ってくれる。
だから。
俺だって、自分の気持ちを贈りたい。
でも、どうやったらいいんだろう?
何て、毎年頭を抱える日々が続く、今時期。

『とりあえず、女が喜びそうなアクセサリーとかで、どーよ?』
『パステルなら、やはり……本とかじゃないんですか?』
『クレイの気持ちを伝えてあげるのが、いい』
……と。見事にばらばらなアドバイスをくれる、仲間たちはこの際無視して。
俺はずうっと考え込んで。
考えて。
考えて。
考えて……。

結論は。
『彼女に聞いて確認する』となった。


原稿執筆中のパステルは、それでも俺を見てくれて。
「どうしたの、クレイ?」
無意識にだろうけれど、可愛らしく首を傾げる。
「はい、これ」
見惚れつつも、パステルに差し入れのココアを手渡すと。
彼女はにっこりと、微笑んだ。

「パステル、ホワイトデーのお返し何がいい?」
その問いかけには、しばし考え込んでから。
「……あ、そうだ!」
彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべてから。

『クレイの作ったお菓子、食べてみたい!』と。

だから、俺はその日から。
毎日菓子店でバイト中。
店のテクニックは盗めないけれど、レシピを知るには近道だと思って。
そして。
いつか喜んでくれる君の、心の笑顔を見たいがために。

「………よし!」
俺は自分に気合を入れると、おもむろに立ち上がった。

     *

   バレンタインは、貰う立場。
   だから男は、楽しいだけ。
   でも、お返しはそうじゃない。
   先月の女の子たちみたいに、どきどきして。

   ……だから。

   どきどきも。
   わくわくも。

   全ては君への、素直な気持ち。





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