気持ちはとっくに知られてるから


   今更面倒だと。
   毎年思わずにはいられず。
   さりとて。
   おろそかになんてできない。

   お前だって、そうだろ?

       *

とりあえず乗合馬車に揺られてる。
行き先はエベリン。
目指すはマリーナ。
アポなし訪問なんざ、いつものことで。
これであいつがいなかったら、それだけのことだ。
一度や二度のすれ違いなんて別にたいしたことじゃない。
少なくとも俺とあいつには。

「……あら、珍しいわね」
その笑みは、俺が来ることを予期していた表情。
さり気なくお茶なんて淹れて。
それでも嬉しそうに、笑ってくれる。
これを見られたなら、ここまで来たのも無駄足じゃねえな、と。
柄にもなく考えたりして。
「お前、何か欲しいもんある?」
「あら、どういう風の吹き回しなのかしら?」
「……ホワイトデー、だろうが」
照れ気味に、自棄気味に。
俺が台詞を吐くと、マリーナは笑った。

「ごめん!でもあんたと『ホワイトデー』なんて言葉が似合わなくて……あー、傑作!」
「お前なあ……」
「嘘、嘘。ごめんね」
そっと俺に耳打ち。
(ありがと、来てくれて)
ありえねぇ純情プレイ。真っ赤な俺たち。
……こんなのありか?

ま。
たまにはいっか。

       *

   いつまで経っても、こんなときは不器用。
   お互いにフォローできなきゃ、やってらんねぇ。

   だから、楽しいんだろ。





特集の部屋へ