君が好きだよ〜守って、守ってあげるから


ある日の昼下がり。わたしは書き終わったばかりの原稿を推敲していた。
 一番最近のクエストを書いた原稿を読み直していると、その時の事が今さっきの出来事のように思い返された。
 わたしの目が、ふと1箇所で止まった。
 そこにあったのはクレイのセリフだった。
『大丈夫ですよ。オレがきっと守りますから』
 このクレイのセリフは、その時一緒にいたアンジェリカ王女に向けていった言葉だった。
 あの時のクレイは、本物の騎士のようで、本当にカッコ良かった。
(わたしも、こんな事言われたいなぁ……)
 そんな事をボンヤリ考えていると、剣の手入れをしていたクレイと目が合った。
「ん、どうした?」
 クレイがにこやかに問い掛けてくる。
「……あのね、ちょっと聞きたいんだけど……」
 なぜ、そんな事を聞いてみようと思ったかは判らないけど、わたしはクレイに尋ねた。
「もし、わたしとアンジェリカ王女がピンチになったとして、クレイはどっちを先に助けてくれる?」
 問われたクレイは、瞬間ポカンとした顔になったが、すぐに
「そりゃアンジェリカ王女だよ」と答え、剣の手入れを再開した。
「そ、そうなの?」
 わたしはクレイが即答でアンジェリカ王女を選んだ事に、少なからずショックを覚えた。
「……やっぱりお姫様だから?」
 口調が険しくなるのを感じる。でも、止められなかった。
「そうだよね。クレイは騎士を目指してるんだもの、お姫様のピンチには駆けつけないとね」
「いや、そういう事じゃなくて、パステルなら自分で何とか出来るって信じてるからね。
確かにアンジェリカ王女はお姫様だから、危険な目にあった時、対処出来ないだろう?」
 クレイは手入れを終えた剣を鞘に戻すと、わたしの方に視線を固定した。
「実際のクエストでも、パステルがしっかりとルーミィの面倒みたり、援護してくれたりするから、オレは安心して行動出来るんだ」
 そう言って、クレイはわたしのそばまで来た。
「それでも、どうにもならないぐらいのピンチになったのなら……きっとオレが守ってあげるよ」
 ニッコリと微笑んだクレイは、そう言ってわたしの頭にポンと手を置いた。
 わたしは心が暖かくなった気がして、彼の胸にそっと顔を寄せた。
「突然、そんな事言い出したのは、この間のクエストの事を書いてたからかい?」
 優しいまなざしで、今度はクレイが尋ねてくる。
「……うん、アンジェリカ王女に、『きっと守ります』って言ってたのを思い出して、
わたしもそんな風に言われたいなぁって……」
「そっか。ゴメンな。言わなくても判ってるって思ってた」
 クレイは少し照れくさそうな顔をして、わたしから目を逸らした。
「好きな子を守るのは、男として当然だからな。だったら、ちゃんと言ってあげるよ。
パステルは……オレが守るよ、いつまでもね」
「うん……」
 クレイの優しい腕に抱かれ、わたしはその胸に顔を埋めた。






HPへ 戻る