消えない傷跡



「チャクデスだ!」
誰の声だっただろう
その一言で
凍り付いてしまった

図鑑で姿は知っていた
意外にかわいらしい
小さなその姿

本物を見たのは
そのときがはじめてだった
こんな風になるなんて
思ってもみなかった

体が動かない
目をそらせない

逃げなきゃ
逃げなきゃ
逃げなきゃ

頭ではそう思うのに
そう思ってはいるのに

動けないわたしの前に
影がさして
チャクデスが見えなくなった

「すぐ逃げるから大丈夫だ」

逃げる?
どこに?
だってチャクデスは
逃げたってどうしようもないのに

「パステル! パステル!」

体を揺さぶられて
意識が飛んでいたことに気付いた

「チャクデスはもう逃げたよ」

あぁ、そうか
わたしたちが逃げるんじゃなくて
チャクデスの方が

「もう大丈夫だ。大丈夫だから」

まだこんなに
わたしはまだ、こんなに

何年経てば
傷跡も全て消えるんだろう
何年経てば
泣かなくなるんだろう

大きな手に
何度、救われるんだろう
大きな手は
何度、わたしを
救ってくれるんだろう





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