気付かれない気持ち

ありがとう、パステル
嬉しいよ、とっても
ところでさ
バレンタインってなんなんだ?

わたしの一生分の勇気は
クレイの笑顔で壊された

今まではパーティの誰にも
義理チョコも贈ってなかった
クレイはそういうのに疎いんだし
女の子たちにチョコレートもらったって
その意味だってわかってないんだと思う

そういうクレイに
こういう日にチョコを贈れば
1ヶ月後に返事をくれる
そう思ったわたしが
馬鹿だったのかもしれない
でも、でもさ
通じると思うじゃない!?
普通はわかってくれるよね!?
そう思ったら悔しくなって
クレイなんて大っ嫌い!
心にもない叫びと共に
わたしはその場から走り去った

わたしはむくれるしかなくて
クレイが悪いわけじゃない
そう思えるまでにだいぶかかった
それでも悲しさは減らなかったけど

もっとわかりやすく
はっきり告白すれば良いんだろうけど
そんな勇気をためるまでに
またどれだけかかるだろう

また頑張れるのかな
ため息が吐き出された
想いははっきりしてるのに
自信がだんだん薄れていく
甘いチョコが苦くなって
のどの奥でつまっちゃったみたい
泣きたくなんてないのに

そのとき、外からの大声が聞こえた
おれにとっての一番はパステルだから
旅館の二階にいるわたしに向かって
おれが好きなのはパステルなんだ
町中に聞こえるような声

わたしは急いで外へと駆け出した
わたしがクレイの前で立ち止まったら
ごめんな
その一言だけは消え入りそうに小さくて
わたしはただただ首を振った

何にも気付かなくてさ
パステルの方がよっぽど勇気あるよな
もう愛想がつきたかもしれないけど
おれの気持ちは伝えておきたくて
でも、あんな大声で…
わたしがつぶやくとクレイは笑って
おれもパステルと同じくらいの
勇気を出したかったんだ
それに、こうしておけば
もうパステル以外は
おれにチョコくれないだろ?
パステルからじゃないと
受け取るわけにはいかないし
みんなに知ってもらった方が良いかと思ってさ

発想がクレイらしいっていうか
クレイって鈍いけど
すごく誠実で素直だもんね
わかりやすいあなたの想いに照れたから
チョコ、ちゃんと食べてね
わたしはそんなことしか言えなかったけど
今度はちゃんと、通じてるよね



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