『風の通り道』

今年もバレンタインデーという日々が・・最悪の日々がやって 来た。
時はジグレス490年の2月13日。
自分の部屋で冒険者の試験を7日後にひかえ、受験勉強をして いた私は事の重大さに気づいた。
「あ・・明日バレンタインデーだ・・。」と。
思えばこの14年間のバレンタインデー。
私は彼氏という者と過ごした事がない。
「リンはハーレムと過ごすつってたし、ラルゥはレインと過ご すつってたし!! 私だけじゃない!!バレンタインデー家族と過ごすなんて!」
私の名はシーラ。シーラ・ロン・アンダーソン。
母は元詩人兼マッパーの冒険者で、父は、元戦士の冒険者。
2人はパーティを組んでいた。
その都度、2人に愛が芽生え結婚し、そして私が産まれた。
母の名はパステル・G・アンダーソン。父の名はクレイ・S・ アンダーソン。
彼らの過ごしていた世代とは違って、今の世代は10歳代から 彼氏・彼女ブーム。
だから周りの友達なんて彼氏いるわ、彼女いるわ。
いないのは私だけ・・。(うわっ!!さびしー!)
「はいっ。お父さん。はっぴーばれんたいんでー!!」
階段を降りて、乱暴に父へチョコレートを渡すと父は驚いた顔 で私を見た。
「お・・おい。どうかしたのか、シーラ。」
その調子を見て、お茶をしていた母さんは苦笑した。
「クレイ。シーラもお年頃なのよ。ね?そうでしょう。」
こののんびりした2人の間にどうして私なんかが産まれちゃっ たんだろうといつも疑問に思う。
2人は鈍感でのんびりやで人がよくて。
それに対しての私は、短気ですぐ怒るしいろいろうるさいし。
正義感は人一倍強いし。
はぁ・・と一時期悩んだことさえもある。
「キンコーン。」
と、玄関のチャイムが鳴った。
「あら。誰かしら??はーい。」母さんはマグカップをカタン と置き、玄関へ走って行った。
しばらくの沈黙。
私と父は目を見合わせて不思議がった。
「クレイ!!あなたへ贈り物よ。」
驚いた事に母さんはたくさんの綺麗な包み紙の箱を抱えて帰っ てきた。
「これは??」 私が尋ねると、
「親衛隊の方々からよ。」
にこっと笑う母さんの顔からは心なしか悲しさが伺える。
そっか。母さん。父さんのこと・・・
「驚いたなぁ。結婚してからも来るなんて・・。」
オイコラ!!そこの鈍感!!
心の中でそう叫びながら、私は父さんを睨みつけた。
「しかも全部・・チョコレート!?」
あったりまえだろ。バレンタインデーだってんだから。
なんだかこっちまで異常にムシャクシャする。
そして、父は何を考えたのか、山積みのチョコレートを丹念に 箱の中へ直し始めた。
「「え?」」
「返してくるよ。俺はパステルとシーラのチョコレートだけで 十分だからな。」
私たちの口は開きっぱなしだった。
「そ・・それでこそ父さん!!」
「ふふ、やっぱりクレイね。」
私が笑うとお腹がぐぅっとなってしまった。
「あら。お腹空いたの?そうね、そろそろお昼にしましょうか 。」
「あぁ、俺も腹減った〜。」
「今日は何作ろうかしら?ねぇ、シーラ。」
「うん。そうね。あのさぁ、母さん。」
「??」
「私ね、彼氏なんていらない。だってまだ本当に好きだと思え る・・ その人の物しか受け取れないような人。いないもの。」
私がそう笑うと、母さんは苦笑して、 「そうね。」と笑った。
冒険者の資格を取るまで、あと7日。
私がパーティを組むなら、こんな二人がいるパーティが組みた いなぁと心から思ったのでした。
   〜終わり〜



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