彼女の戦い


  ねえ。
  この戦いは、誰のため?

     *

毎年のことながら、私の頭とお財布の悩みの種。
それが、バレンタインデー。
乏しい台所の中で、何とか毎年皆のために作ってきたチョコ菓子。
さて、今年はどうしよう……?
「───あ」
唐突に思い出した、あるお菓子。
「よし、決まり!」
思い立ったが吉日とばかりに、私は早速準備を始めた。

「はいっ、皆!」
皆に分けた小袋の中には、ココア生地の薄いクッキー。
薄い生地を二つ折りにして、見た目は三日月っぽくなっている。
「あれ?パステル、この紙は何?」
さっそく目敏いクレイの質問が飛んで。
「見てのお楽しみ!さ、食べて食べて」
私は皆を促した。
クレイたちは、クッキーに挟み込まれた小さな紙を取り出して、納得。
「……くじなんだね、これ」
「聞いたことがありますよ、フォーチュンクッキー、でしたっけ?」
「パステル、これ作るの大変だったろう」
「毎年ご苦労なこって」
「ぱーるぅー、すごいおぅ!」
一応みんなの賞賛を得ることができた。
……材料が少なかったのを誤魔化すための、苦肉の策とは気づかずに。

「……疲れたぁ」
夜、部屋に戻って一息。
机の上には、たくさんつくったクッキー用のくじの余り。
「うふふ」
くじには色んなことを書いた。
『今日は一日大人しくしていましょう』
『少しは家事も手伝ってね』
……なんて。
多少自分の希望も書いてしまったが、それはご愛嬌としてもらうことにして。
ふと、ひとつの言葉に想いを馳せた。

『あなたが好きです』

……それは、たった一人へ宛てた、告白。
彼がいつ、気づくかはわからないし。彼には婚約者もいるし。
でも。
どうしても、伝えたかったから。
(せめて……気づいて)
自分なりの、精一杯の表現だった。

こん、こん。
「パステル……いいか?」
「あ……うん」
震えがちな声で、尋ねる貴方と。
どきどきする心臓が、飛び出しそうな私。

     *

  ねえ。
  この戦いは、誰の勝ち?





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