鈍感3号――完結編

「ぱーるぅ、とりゃーまだ怒ってんだおう」 
「クレイしゃん。どうすればトラップあんちゃんは許してくれるデシか?」
眉じりを下げ泣きそうな顔をするルーミィと、しょんぼり肩(?)を落とすシロ がパステルとクレイに相談しに来た。
さすがにこの二人も自分達が何か悪いことをしたからトラップが怒っているのだ と思ったらしい。
そんな姿を見てパステルとクレイは顔を見合わせた。
「たしかに変よね。いくらトラップだってルーミィ達に対してだけは怒ったり無視 したりしなかったのに」
「二人とも。昨日何をしたのか話してくれないか」
今度はルーミィとシロが顔を見合わせた。
そして考える。
「うーんとね、ルーミィしおちゃんといっしょにおしゃんぽしてたんだおう。そい たら、とりゃーがいたんだおう。そいでね、まいーなもいたんだおう」  
「すごくすごくお顔を近づけてたデシよ」
パステルとクレイは頭の中で二人の言葉をまとめてみた。
つまり、ルーミィとシロが散歩をしていたらキスしようとしていたトラップとマ リーナに出会った。
同じ事を考えついたのかパステルとクレイの頬が赤く染まる。
「えっ、えっとー……なぁ、シロ。あのな、それは、二人は顔が近かっただけで、 そのーくっついてはいなかったんだな」 
しどろもどろにクレイはシロに訪ねた。
そんなクレイの心中を当然わからずシロは純粋無垢な瞳で返した。
「はいデシ。でもお鼻とお鼻がひっつきそうデシた」
「そいで声かけたら、まいーながとりゃーをえいってとばしたんだおう」   
   それを聞いてパステルとクレイは同時に声を出した。
「「……それは怒るかも」」

「はぁ……ったく」 
トラップは自室のベットに横になり先ほどから一人で怒っていた。
寝ようにも昨日のことでのイライラが出てきてしまう。
「あいつらがわざとしたわけじゃねぇのは分かってるんだがなぁ……あぁー、やっ ぱり怒りがおさまらねぇ」 
トラップも二人が悪いと思っていない。
しかし、それでも感情と考えが一致しないことはよくあることだった。
それにあんなチャンスはもうないのかも知れなかったから。やおらベットとから起きあがると呟いた。
「酒場に行ってこよ」
 昼間だというのに、どうやら酔って気を紛らわそうという考えにまとまったようだ。
と、ドアを叩く音がする。
「誰だよ、ったく。――ここには鍵なんてついてねぇよ!」
扉が開き入ってきた人物は――
「……マリーナ」
少し染まった頬をふくらましたマリーナがそこに立っていた。
先ほどまでの怒りがどこかに消し飛び……かわりに昨日の光景が浮かび上がってきた。
あと少しでふれあうほどの距離にいたマリーナの顔を。
「あっ、と……ど、どうしたんだよ?」
うわずる声を抑えつつ、なんとか平常心を保とうとした。
それに対しマリーナは一言も口を利かずトラップの隣へ腰を下ろした。
「お――」 
「ルーミィちゃんとシロちゃんに昨日から口聞いてないんだって?」
あくまでもトラップと目を合わせようとせずにそう言った。
この言葉で何故マリーナがここにいるのか納得がいった。
(あの世話焼き夫婦の仕業か)
世話焼き夫婦、クレイとパステルの笑った顔が脳裏によぎる。
「別に怒ってるわけじゃねえ。ただ、邪魔されたことに苛立ってるだけだ」
「どう違うのよ。それに……邪魔されたって」
マリーナはようやくトラップの方に顔を向けた。
普段から想像できない顔を真っ赤にしたマリーナ。
トラップは素直にかわいいと思った。
「ルーミィちゃ――!」
ん達は悪くない。そう続けようとしたマリーナの唇をそっとトラップがふさいだ。
時間にするとコンマ1秒ほど。つまり……軽く触れるだけのものだった。
「これでルーミィとシロはゆるしてやらぁ」  
顔を更に真っ赤にさせ口を押さえるマリーナを見てニッと笑った。

  追記――その夜のトラップ前日とは180度違い機嫌が良かった。
ちなみに、クレイも妙に機嫌が良かったのはまた別の話で……


HPへ 小説の部屋へ