悲しいキスの、その後に


「ドーマから、手紙が来たんだ」
クレイの一言は、私への断罪のような気がした。

そろそろ帰ってくるように言われてる、って。トラップが以前から、耳打ちしてくれていた。
家に戻って、婚約者と結婚して。騎士としての生活を送ること。
それは彼が元から与えられていた人生で。私や他の人たちは、何も言うことができない。
…それでも、好きだった。
でも。

「パステル」
その日の夜、部屋に訪れたクレイは。静かに私に語りかけて。
「俺さ、ドーマに戻ることにした」
「そう…」
私には、何も言えなくて。ただ、答えるだけだった。
「それで、パーティの事なんだけど。一度…解散させることにしたいんだ」
「うん、そうだよね。私も一度、ガイナに戻って…先のことは、またゆっくり考えるわ」
彼にはなるべく心配かけずに、旅立ってもらいたいから。
私は必死で、平静を装って。悲しい演技を続けている。

「いつ、発つの?」
「…明日には。なるべく早く行こうと思って」
「そう…頑張ってね」
「うん、ありがとう」
早く行ってもらいたい。会えなくなるのは辛くても、泣くのを我慢する時間が減るだろうから。
「それじゃ、おやすみ」
「うん、おやすみなさい」
これが最後。
そう思って、私は。精一杯の笑顔を見せた。
…なのに。

「…パステル」
ぐいっと引き寄せられたとき。私は彼の、なすがままで。
強引に口付けられたときも。抵抗なんて、できなくて。
悲しくて、幸せだった。

「ごめん」
いつもと違う、熱い瞳で。クレイは私を抱き締めて。
「でも、俺。必ず行くから」
「クレイ…?」
「何年かかるかわからないけど、絶対君を迎えに行くから。俺の我儘でしかないけど、もしも
信じてくれるなら…。俺のこと、待ってて欲しい」
「……うん」

約束の証なんて、ないけれど。そんなもの、必要ない。
彼の言葉と、彼の瞳が。私の中では、一番の証だったから。

そして、今も。
私は彼を待っている。







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