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曖昧には、しない。 * 『言っとくけど、ちゃんと本命用だからね!心して、受け取んなさい!』 あんまりにも予想外だった、あいつの言葉と真っ赤な顔。 そして、受け取ったチョコレートの箱の、何てことない重さ。 全部、忘れたりなんて、できやしない。 『来月、ちゃんと返事返さないと、許さないわよ!』 どっかの純情青春カップルの片割れみたいに、ぶきっちょに。 真っ直ぐ俺の目を見つめて、耳まで真っ赤に染め上げて。 やたら強気に「返事をしろ」と言い捨てて、逃げるように去った背中。 いつも通りに結われた髪が、ふわふわ踊ってたのだって、鮮明に覚えてる。 ……当然、か。 別に、迷ってたわけじゃない。 自分の気持ちは、ずっと前から決まってたから。 ただ。 そう、ただ。 「……まさかアイツに、先越されちまうとはなぁ……」 男としての、ささやかなプライド。 自分から言いたかったのに、先に相手に行動されて。 こう言っちゃ何だが、俺と同等かむしろそれ以上にプライド高くてクールを装う奴だったのに。 あんなに、必死に。 あんなに、真剣に。 あんなに……素直で。 「………………、だー、もうやめやめ!」 そう、こんな風にしてても、埒が明かない。 俺は腹に力を入れて深呼吸すると、立ち上がる。 手には、ここエベリンへの旅用にいつも使ってる鞄。 最低限度の荷物の中に、忍ばせてきたのは、あいつへのプレゼント。 それから。 柄じゃないって承知してる、鉢花ひとつ。 (………あいつ、気づくんかな………) 花の名前は、カルセオラリア。 目指すあいつの家まで、もう少し。 ついでのように持参した花の鉢が、がさがさ音を立てていて。 いらぬ緊張感が、高まる。 でも自分の顔に浮かぶのは、何故か、笑顔。 緊張感と同時に、自信がみなぎる、不思議な感覚。 「……よぉ」 「……あら、いらっしゃい」 ほんの少し頬を赤らめて迎えてくれた、今日の相手に。 俺は鉢を、手渡した。 きっとお前は、気づくだろ? * 逃げないよ。 絶対に。 |