予感があった
もしかしたら今日
あいつが来るかもしれない
根拠のない
それでもよく当たる自分の予感に
少しだけ期待を込めていた
お店を開けて
たまに来るお客さんの相手をしながら
だんだんと気もそぞろになっていく
予感があった
今、階段を上って来ている人は
あいつかもしれない
重々しい足音は
あいつの立てるものとは違っていたけれど
考え事でもしてるのかもしれないし
重いものを持っているのかもしれない
足音が扉の前で止まった
鼓動が高鳴る
ノックなんてするはずのないあいつが
扉の前で立ち止まることなんてなかったけれど
重いものを抱えなおしているのかもしれないし
入るのに迷っているのかもしれない
扉が開いた
「どうしたの?」
柔らかく微笑んだ
「顔を見に寄ったんだ」
扉の前ではアンドラスが笑っていた
わたしが抱いていたのは
予感ではなく
寂しさを持て余した末の
期待でしかなかったことに
閉店間際になってから気がついた
「会えると思ったのにね」
予想以上に膨らんでいた期待が
急激にしぼんでいった
痛みを伴うほどに
「会いに行こうかな」
「誰に?」
音もなく階段をのぼり
ノックもせずに入ってきて
あんたがわたしの傍らに立っていた