ホントのキッスをお返しに

「クレイ、これ・・・」
 わたしは紙包みを出した。部屋にはわたしとクレイの二人だけ。
ルーミィとシロちゃんは遊びに出かけ、他のみんなはバイトに行っている。
数日前から予定していた、二人だけの休日。
 今日はバレンタイン。クレイに渡すのは、他とは違う、とっておきの手作りチョコ。
 ベッドに腰かけていたクレイに、そっと包みを手渡す。
「お、ありがとう。開けていいか?」
「もちろん。早く食べないと溶けちゃうよ」
 優しい笑顔で包みを開けるクレイ。その笑顔を見てるだけで嬉しくなってしまう。
「食べやすいように、トリュフにしてみたんだけど、どう?」
 わたしはクレイの手の中にある袋を見ながら問い掛ける。
手作りチョコは前に作った事があったけど、トリュフは初めてだったので、 少し緊張してしまう。出来に自信が無いワケではないんだけど・・・。
ちょっと形が崩れちゃったんだよね。
「結構、手間かかったんじゃないのか?」
「そうでもないよ。ちょっと見た目は悪いけど・・・。こういうのダメかな?」
「そんな事ないさ。うれしいよ。パステルが作ってくれた物なら、どんな物でもね」
 そう言って、クレイは袋からトリュフを一つ取り出し、そのまま口に運んだ。
「うん、おいしいよ」
 ニッコリと笑うクレイに、わたしは思わず飛び上がりそうになるぐらいうれしくなった。よかった、喜んでもらえて・・・。
 好きな人が喜ぶ顔を見る事。これ以上に幸せな事ってないよね。
わたしは手を伸ばし、トリュフを一つ手に取って自分の口に入れた。
うん、味に関しては、我ながら良い出来だと思う。
 もう一つ手に取って口に運ぶ。うんうん、おいしく出来てる。
「パステル・・・」
「ん?」
 クレイが目の前でおかしそうに笑っている。
「オレにくれたバレンタインのチョコを、パステルが食べてどうするんだよ?」
 そう言って、クレイはわたしの額をコツンと叩いた。
「あ、それもそうだね」
 わたしは答えながらも、ふと、ある事を思いつき、実行する事にした。
「じゃあ、返すね」
 わたしはクレイに飛びつくと、そのまま口写しでトリュフをクレイに渡した。
チョコレート味の甘いキス。これには、さすがにクレイも驚いたようだった。
「い、いきなり何を・・・」
 真っ赤な顔でクレイが言う。
「ビックリした?」
 わたしはそう言って、クレイの胸に顔を埋めた。きっと、わたしの顔も真っ赤になっているから。
 ドキドキとクレイの鼓動が聞こえる。わたしの胸も、破裂しそうなぐらいドキドキしている。
 クレイはわたしを抱きしめ、耳元で囁く。
「ホワイトデーには、オレも同じ方法でお返しするよ。でも、その前に・・・」
 クレイの手がわたしの顎に触れた。その手の動きに合わせて、わたしは顔を上げる。
 すぐ目の前に、クレイの顔がある。そして、その唇がわたしの唇を塞ぐ。
そのまま、わたしたちは、縺れるようにベッドに倒れ込んだ。



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