最初に、

笑顔を花に喩えたのは誰だろう

 

 

“花ひらくような笑顔”

 

君のような微笑みを、そういうのだと思った

 

 

 

花ひらく

 

 

「すき」

 

「え・・・?」

「すきすきすきすきすき・・・・・・」

「パ、パステル??」

 

突然の「すき」の連呼に、わけも分からず問い返すと、彼女は神妙な顔をして言った

「なかなか言えなかったんだよね、付き合う前は。 簡単な言葉なのになぁ」

あぁ、なるほど

いきなり何を言うのかと思ったら・・・

「うん、分かる。単純な気持ちほど、伝えにくいものはないよな」

同意するようにそう言うと、パステルがきっとおれを睨んだ。

「な、何・・・?」

「言ってたよね、クレイは。 簡単に、好きって。 昔、私が詐欺に遭った時も、『おれは、持ってる金全部渡してしまうようなパステルが好きだよ』って。言ったよね?」

問い詰め口調に、思わず後ずさる

「え・・だって、それは本心だし・・仲間として」

「・・・・・・すごく嬉しかったよ。 クレイは、告白の時も私のこと好きって言ってくれた。 でも、私は付き合う前もずっとクレイのこと好きだったのに、一度も言えなかったなぁって思っただけ」

「だから、今言ってるの?」

そう問うと、うんと一度頷いた

 

かわいいなぁ、パステルは。

思わず相好を崩すと、彼女は不思議そうな顔で首を傾げた

 

妹みたいに思ってた

ルーミイとパステルは、おれの大事な家族で仲間で、守ってあげたい、守ってやらなきゃ、といつも思ってた

でも、女の子ってこわいよなぁ

ついこの間までは無邪気で子供みたいに笑ってたのに、いつの間にか大人な微笑を浮かべてる

その変化に目を奪われて、そして、恋に落ちる

守られてるのは、おれの方じゃないかと思うくらい、君はいつもおれを包みこんでくれてるんだ

 

 

「パステルが、好きだよ」

 

知らぬ間に口から出た言葉に、パステルがはっと顔を上げる

そして、赤い顔で口をとがらせた

「やっぱり、ズルイ! クレイはいっつもこうなんだもん。ずるい」

「なにが」

「いつも不意打ちだよ。でも心に真っ直ぐ飛び込んでくる、悔しいくらい胸に響くの。クレイの、『すき』」

「・・・じゃあ、お互いさまだ」

小さく呟くと、パステルが、え?という顔をした

「何でもないよ」

にこっと笑うと、パステルもふわっとほころぶような笑みを浮かべた

 

・・・・・あぁ

ずるいよ、その笑顔

それだけで、おれはもう胸がいっぱいで、思いがこみあげてくるんだ

 

 

「夢があるの」

突然、思い出したように彼女がつぶやく

「夢?」

「結婚して子供を生んで、たまに小説を書きながら、ダンナさまの帰りを待つ。そんな風に幸せな家庭を作ること、それが一番の夢。もしかしたら、近い将来かもしれないけどね」

最後はいたずらっぽく笑って、でもパステルの思いは痛いほど伝わるような口調

ずっと遠くを見据えているような、意外なほど意志の強い瞳

「そこには、おれも居るの?」

「クレイしか、想像できないわ」

「・・・・・・・・・・」

「私の隣には、クレイがいてくれなくちゃ夢がかなわないの」

 

 

 

 

そう言って、

また、そんな風に微笑うから。

 

 

 

 

君は花のような人だ

 

 

きっと気障だと笑いとばされてしまうような言葉を、おれはまた言いたくなるんだ







HPへ 戻る