花火

 体中に振動が伝わる……
 これは花火のせいだけじゃない。
 大きな音がありがたい。
 だって……この音がなければ私の鼓動が聞こえてしまう。
 そう思うくらい私の胸はドキドキしている。
 ううん、すでにドキドキではすまない。
 だって……

「すごい人だな」  
 クレイがのんきにそんなことを言った。
 これから通らなければ行けないのに……
 でも、本当にすごい人。
「ほら」
 左手を私に差し出した。
 何? そう思って首を傾げるとクレイは笑って私の右手をとった。
「離れると……嫌だから」
 顔を赤くして笑った。
 きっと、私の顔も真っ赤なんだろうな。
 私達は手をつないで人混みを歩いた。
 どうしてこんなに緊張してるんだろ。
 クレイに触れるのは初めてじゃないのに……
 おんぶだってして貰ったこともあるのに……
 二人だから? 
 そう言えば二人であるくの久しぶり。
「そう言えば、こんな風に二人で歩くのって久しぶりだよな」 
 前を見ながらクレイが言う。
 私と……同じ事考えてたの?
 別に不思議じゃない。
 今までだって同じようなこと考えてた時はあるのに……口元がにやけてきちゃう。
 どうして?
 気が付けば花火会場にたどり着いていた。
 少し残念。
 触れあう理由がなくなるから。
「もう少し……このままでもいいかな?」
 えっ?
 驚いて見上げるとクレイが真剣な顔をしている。
「あのさ――」
 言いかけて止める。
 止めて……また口を開いた。
「俺、パステルのこと――」
 本日一発目の大輪の花が咲いた。
 大きな音と振動を人々に伝えながら。
 私はクレイに微笑みかける。
「うん……私も――」
 

 だって……私もクレイも飛び出しそうなほどハートが喜びの悲鳴を上げている。
 これは花火のせいじゃないよね
 ねっ、ハートさん♪  


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