「頑張って」って言われると、嬉しいけど。
ちょっと辛いこともある。
全力で走ることを、強要されるような気がして。
ふと、そんなことをクレイに話してみたら。
「…パステルもそう思ってた?」
意外そうな顔で、反対に聞き返された。
「え? クレイも?」
私が答えると、彼は頷く。
「ほら、『頑張って』って言葉は、とにかくがむしゃらにやれってことになるだろう?
最後までやり通すって感じのさ」
「うんうん、そうなの」
彼の言葉が、私の言いたいことそのものだったから。
私は素直に頷いた。
「だから、周りが元気付けようとしていってくれてるってのが頭ではわかっていても、
時と場合によってはけっこうキツイよなー、あれ」
クレイはそう言って、苦笑混じりの笑顔を見せる。
…この人も、そういえば。言われ続けているのかな。
確かに彼は、私たちのリーダーで。ちょっと…優し過ぎるほど、優しいときもあるし。
思えば、私も。彼につい「頑張って」って言ってしまってるような気がした。
「…ごめんね、クレイ」
私は何だか申し訳なくなって、彼にそっと謝罪する。
「え? パステル、何か言った?」
どうやらクレイには聞こえなかったみたいで、彼は私に聞き返す。
「え、あ、あの…。あの、ね。その、今まで、あんまり考えないで『頑張れ』って、
あなたに言ってたような気がして…。本当に、ごめんなさい」
私は慌てて言いなおした。すると彼は、驚いたような表情になった。
「何言ってんだ?」
「え?」
彼の態度に、今度は私が目を丸くする番。
「パステルは人にも言うけど、それ以上に自分がいつも頑張ってるだろ? そういう人
の言葉は、重荷なんかじゃない。むしろ嬉しいよ」
「クレイ…」
彼の言葉は、私にとって。とっても嬉しいものだった。
私のこと、『いつも頑張ってる』って思ってくれているんだ、クレイ。
「ありがとう、クレイ」
私が言うと、彼は優しい笑顔になって。
それから私の耳元で、そっと一言囁いた。
「パステルこそ、頑張り過ぎるなよ? あんまり無理してたら、何にもできないように
俺がずっと抱き締めて、離さないようにするからな」
…クレイったら、何言ってるのよ!
彼の言葉で、私は真っ赤になり。その様子を見ていたクレイは、やはり赤くなって。
そんなふたりをニヤニヤ眺めていたトラップも、密かに頬を染めていた…らしい。
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