今日、想いを伝えよう。
長く秘めた、この想いを。
そう思って花束を買ったら・・・どうやら奴も、俺と同じ思いを抱いてたみたいで。
花屋でばったり会ってしまった。
奴の頼み方と、頼んだ花とで誰にあげるかは明白で。
(・・・パステル・・・)
心のどこかが重くなる。
ニヤニヤ笑う店員に見送られ、俺達はそろって店を出た。
口を開かなくても、向かう所はお互い同じのはず。
(・・・どっち)
井戸のそばには、ルーミィとシロと。
そのかたわらで、ひなたぼっこの君。
陽に照らされて、君の髪が一段と綺麗に映える。
陽に照らされて、側の二人を見つめる君の瞳が一段と優しく見える。
(・・・君はどっちを)
俺達が君に見とれてボーっと突っ立ってると、君からこっちに気付いてくれた。
「お帰り、二人とも」
ああ、とかうん、とか口の中でモゴモゴと答える。
隣をちらりとうかがうと、それは奴も同じだった。
「・・・どうかした?」
小首をかしげて訊く君が、いっそう愛しく見えて。
(・・・どっちを選ぶの・・・?)
「あれ?花束なんか持っちゃって」
後ろ手にしていた花束に気付かれて、俺は慌てて隠しなおす。
・・・驚かせたかったのに。
「今更隠してもダメだよー」
笑って俺とトラップを見上げる。
二人とも、恥ずかしいのと決まり悪いのとが半々。
きっと思ってたことは・・・驚かせたかったのは・・・一緒だったはずだから。
俺がトラップに苦笑すると、奴も少し赤くなって苦笑を返す。
そして大きなため息をついて、パステルに手を差し出す。
花束を持っている手を。
「ほら、パステル。お前にだ。やるよ、これ」
「ええ?トラップが花束?どうしちゃったのー?」
言いながら、でもパステルはにこにこと嬉しそうにそれを受け取った。
−嬉しそうに。
トラップが俺を見て、肘でコツンとこづく。
俺は微かにうなずいて、手を差し出す。
花束を持っている、その手を。
「・・・はい。俺もなんだ、パステル。君にあげたくて・・・」
「ええ?どうしちゃったの、二人とも?今日って何かの日だったっけ?」
『パステル』
二人の声が、自然にそろう。
「・・・え?」
嬉しそうに腕の中の花束を見つめていた彼女が、ふと顔を上げた。
・・・一瞬、口を開いたトラップが・・・また何も言わないまま、閉じて。
そしてパステルに普段とは違う笑みを向ける。
「いやー、まあ深い意味はねえぜ?ただおめえにやりたかったんだ、それ」
パステルは微かに赤くなった顔を少し伏せて、でもしっかりと呟く。
「トラップも・・・たまなは優しいんだ」
「何か言ったか?」
次に顔を上げた彼女は、ひまわりの笑顔。
「ううん、ありがとうトラップ。嬉しい・・・とっても」
「・・・そっか。良かった」
「俺もさ、店の前通ったら綺麗な花があったから」
パステルに向ける微笑だけは。
他の誰よりも特別で。
「パステルにあげたら、喜んでくれるかなって」
「・・・」
パステルはまた腕の中の花束に視線を戻す。
言葉はなかったけれど。
その瞳の輝きは・・・さっきとは少し、違うように見えて。
「やだなあ・・・クレイ」
「え?気に入らなかった?」
「こんな事されちゃ・・・どうして良いかわかんないよ、嬉しくて」
・・・ホッとすると同時に、自然に笑顔がこぼれた。
ー良かった。
「それじゃ、パステル」
「じゃーな」
「うん・・・ありがとう、本当に」
もう一度振り返って、君の姿を焼き付ける。
君の笑顔の一度一度を。
きちんと思い出にとっておけるよう・・・
「・・・なあ、トラップ」
「あんだよ」
「やっぱ・・・一緒にはやめとこうな、とりあえず」
トラップは前を見たまま、薄く笑う。
「そーだな。ーあーあ・・・」
両手を大きく挙げて伸びをするトラップ。
「どうした?」
「−いくらおめえと付き合いが長くて、これからもパーティ組むんでもさ」
トラップが横目でニヤリと笑う。
「これだけは譲れないぜ、クレイ」
・・・トラップ。一番の親友。
これからも一緒に歩いていきたい。−だからこそ。
「俺だって譲れないさ、トラップ」