笑顔の値段は?


「高くつくわよ、クレイ」
じろり、と睨んだリタの視線が、物凄く痛かった。

     *

ホワイトデー、といえば。
バレンタインデーのお返し、と相場が決まっているらしく。
今年、思いがけずたくさんのチョコレートやら、贈り物やらを貰ってしまった俺としては。そのお返しに、頭を痛めていたのだけれど。
パステルに相談すると。
「───クレイの馬鹿っ!」
泣きながら怒鳴られてしまい、それから口をきいてもらえなくなった。

仕方なく、トラップに相談すると。
「おめぇよぉ……。ほんっとーに、超がつくほど馬鹿野郎だな」
盛大な溜息と、最上級のけなし言葉を返されて。
藁にもすがる思いで、猪鹿亭のリタを訪ねて。

そして、冒頭の台詞に至ったわけだ。

「どういう意味だ? リタ」
首を捻る俺に、リタがトラップ以上に盛大な溜息。
「クレイ……。あなたって、本っ当に鈍感!なのね」
リタは、もうお手上げだというように目を閉じて。
「いい? パステルだって、あなたにチョコくれたでしょ? しかも気合十分の手作り大本命用をっ!」
凄みのある表情で、俺に迫り。俺は……やっと、皆の態度の原因に、思い当たった。
そんな俺の変化を察して、リタは呆れ返った表情に変わる。
「言っておくけどね、親衛隊の女の子とパステルを一緒くたにするんだったら、私絶対協力しないからね! そこら辺、きっちり今までの分も落とし前つけなさいよ! いいわね!」
「………わかった」
普段とは違う、リタの有無を言わせぬ迫力は。おやじさんのそれに、とてもよく似ていて。俺には逆らう術もなかった。

そして。リタの助力と指導を得た俺は。
親衛隊の女の子たちに、大量のクッキーを焼いて渡し。
「「「クレイさん! ありがとうございます、感激です!!」」」
何ていう、彼女たちの輝くような笑顔に出会ったのだけれど。

問題は、これからで。

すっかり悲しい思いをさせてしまったパステルには、どう埋め合わせすればいいのかを、全く考えつけていない。
さすがにリタも。
「いーい? これは絶対、クレイがひとりで考えるのよっ!」
非情なひとことを、叩きつけて。トラップまで。
「おめぇも男なら、一度ぐらいびしっ!と決めてみろや」
匙を投げた、というか。そんな発言をしてくれた。

さて、俺はどうすればいいのだろうか?
……大好きな笑顔を、すっかり曇らせてしまった君に。
何を贈れば、また笑ってもらえるのだろう。

それが決められるまでは。
そして、効果がはっきりするまでは。
俺にとって、この苦難は続く、らしい。





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