ポーカーフェイスの代償

「ねえマリーナ?マリーナってさ、トラップのこと...」
「え?」
「もし...なら、ついて来て欲しいんだ」


 ドカッ
「おねーちゃん!おれっちビールね!クレイもそれでいいんだよな?」
 いつもの窓辺の席に腰掛けながら、おれはクレイにそう聞いた
「ああ」
「おねーちゃん!こっちビール2つね!」
 とりあえず注文も済ませたことだし
「で?クレイ話ってなんなんだ?」
「あ、ああ」
 なんだか歯切れの悪い感じだなぁ。
 しかも、なんだか暗い!!
「なんだよ、まぁたパステルとのことで悩んでんのか?なんならオレが」
 いいながら手を差し出すと、クレイはその手を払いのけた
「なんなんだよなぁ」
 変なクレイだぜ
「あいよ!ニィさんたちお待たせ!」
 ドンッドン!!
 ウエイトレスのねぇちゃんが、そう言ってビールを置いてった
「ま、とにかく、飲むべ、飲むべ!」
 そうしておれがビールに口をつけると、ようやくクレイが話し出した
「あのな?トラップ」
「んん?」
「おまえさ、マリーナのことどう思ってるんだ?」
 ブッハ!!
 思わずクレイにビールを吹き出しちまった!
 袖で口を拭っていると、クレイもポケットからハンカチを出して顔を拭く
「ゲッホ!ゲッホ!!藪から棒になんだよ!」
「いや、前にさ。ほら、おまえの誕生日におれ、わざとマリーナとデートさせただろ?」
「あ、ああ」
「おれは何も聞かずに、トラップはマリーナのことが好きだと思ってそうしたんだけどさ、
実際のところは知らないだろ?もしかしたら、単に迷惑かけただけじゃないかと思ってさ...」
 こいつ、んなこと考えてやがったのか??
 あいっかわらず、ご苦労の多いこって
 少し呆れながら仕方なくおれは言おうとしたんだけど
「あのなぁ、おれは...おれは...」
 って、んなこと恥ずかしくて言えっか!!
 思わず口どもるおれをみて、クレイはため息をついた
「はぁ...やっぱり迷惑だったか。そうだよな、鈍感、鈍感って言われているおれが、 こんなことに手を出すなんて間違ってたんだよな」
「だぁら!!おれはんなことなんも言ってねぇだろ?」
「じゃあ...」
「うんと、そのだな」
 やっぱり上手く言えないおれに、
「じゃあ聞き方を変えるよ。トラップにとってマリーナはどんな存在なんだ?」
「どんな存在...か」
 小せぇころから、一緒に修行をつんできた幼なじみで
 しっかり屋の、がんばり屋で、弱音を吐いてるところなんて見たことなくて
 いつもその小さい体にパワーいっぱいで...
 だから、だからこそ...
「守ってやりてぇんだ」
「守って?」
「そう。あいつはがんばり屋だろ?弱音を吐いてるところなんて見たこともねぇ。だから こそ、そんなあいつを...守ってやりてぇんだ」
「そっか」
「ああ...」
 クレイはそれ以上はなにも聞かず
 そしておれたちには珍しく、騒ぐことなく大人しくそのビールを飲んだ

「トラップ、今日はおまえのおごりな?」
 唐突に明るい声でそういうクレイ
「はぁ?なに言ってんだ?」
「まあ、いつもいつも、おれがやられっぱなしだと思うなってことだよ!」
 さっきまでの何か考えつめたような感じでなく、明るくクレイが言う
 どういうこった?
 なんだかわけがわからずにキョトンとするおれに、クレイは指差した
「う・し・ろ、見てみろよ!」
 う、うしろ〜〜???
 なんだか、いや〜な予感がする
 ゆっくりと後ろを振り返れば、そこにいたのは
「は〜い!トラップ♪」
 いつもと違う服装、違う髪の色をした、でも紛れもなくそれはパステル
 そのパステルが手を振っている
 そして、そして
 やっぱりパステルと同じくいつもと違う服装、違う髪の色、そして赤い顔をした...
マリーナの姿
「お、おめぇら、いつからそこにいんだよ!!」
 怒鳴るおれに、パステルはニコニコしながら答える
「トラップたちが来る前から♪」
 な、なにーーー!!!
 ということは、マリーナの顔が赤い原因は....
「クレイ!!おめぇはめやがったな!!!」
 そう怒鳴ってクレイの胸倉を掴むと
「だから、いつもやられっぱなしじゃないって言ったろ?」
 かぁーーー!!信じらんねぇ!!
 力尽きて、クレイをホ放り出すと
「じゃあな、トラップ!ほらパステル行くぞ!!」
 そう言って立ち上がり、クレイはパステルに声をかけた
 そしてパステルはクレイのほうに小走りしたんだけど
「あっ」
 小さく言って、おれの傍にきた
「あんだよ?」
 ふてくされながらそういうおれの耳元に、パステルは小さく囁いた
「...........」
 それはおれ以外の誰にも聞こえない、声だっただろう
 そしておれを赤くさせるには、十分な言葉
「じゃあね、トラップ♪」
 パステルはにこやかにそう言う
「おれにだって、ポーカーフェイスは出来るんだぜ?ま、あとはがんばれよ!」
 その言葉を残して、クレイたちは帰っていった

 二人が帰ったあと、おれは気まずく思いながらマリーナの方をみる
 当のマリーナは、さっきからずっと下を向いて、一言も話さない
 はぁ...
 今回はマジでやられたわ
 そう思いながら、さっきパステルが言った言葉を思い出す
「なあ、マリーナ。おれ聞いちまったんだ、おめぇの気持ち」
 はっと顔をあげ、ようやくおれの顔を見てくれた
「トラップ...」
「さっきの言葉にウソはねぇよ。あれがおれの本心だ。」
 うわー、顔が熱い。ぜってぇおれの顔真っ赤だぞ!!
 仕方ねぇ、あいつらに乗せられてやるよ!
「おれ、おまえのこと....」

 このセリフはマリーナだけに、聞かせるから
 わりぃけど、あんたらには聞かせらんねぇや
 ただ、パステルの言葉がなんだったのか、それは教えてやるよ

『マリーナね、トラップのことずっと大好きだったんだって!』
 そして、クレイのポーカーフェイスの代償は
 マリーナの笑顔となったんだけど
 ちくしょう!!
 おれさまとしたことが、クレイたちにまんまとはまられちまったい!!


                                   −fin−


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