アンダーソン家の一コマ
コンコン。リビングのドアをノックするとアンダーソン氏は居るはずの娘に声をかけた。
「入るぞ。すまんが茶を一杯くれんか。」
その声に気付き、彼の娘が顔を上げた。
「あら、お父様。ハイハイ、お茶ですね。ちょうっと待ってていただけます?」
そういうと彼女は読んでいた冊子を置き立ち上がった。どうやら雑誌というわけでも、図書室の本というわけでもないようである。
「ん? 何じゃその本は?」
ふと気にかかったアンダーソン氏は娘に問い掛けてみた。
「ああ、これ? パステルが送ってくれた『冒険時代』ですわ。とっても面白いんですのよ。」
一瞬『はて?』という顔をしたアンダーソン氏であったが、やっと『パステル』という名前に思い当たったらしい。少々眉をひそめながら娘に話し掛けた。
「ああ、この前来たクレイの仲間のお嬢ちゃんか。じゃが何であのお嬢ちゃんがおまえに本を送ってくるのだ?」
彼の問いは娘にはたいそう面白かった様で(当たり前である。アンダーソン氏がクレイのパーティの仲間、しかも一緒に冒険をしている少女に興味を向けたのである。いつもなら『さっさと別れてもっと修行を』といって聞こうともしないのだから珍しいことこの上もなかった。)くすくすと笑いながら答えた。
「この間うちにきたときに送ってくれるよう頼みましたの。だってクレイの手紙だけじゃ詳しいことは解かりませんし。何より、彼女の小説を呼んでみたかったもので。早々、読み終わったらジンジャーや、ブーツさんに貸すことになってますのよ♪」
流石のアンダーソン氏もジンジャーや、ブーツの名前が出てくるとは思わなかったらしく少々吃驚したようで思わず声をあげてしまう。
「何、ジンジャーお嬢様やステア・ブーツにもか?」
「ええ♪ ではお茶の用意もありますから私は行きますね。お父様はそこでお待ちになっていてくださいな。」
彼女はそういうと会話を一方的に打ち切ってさっさとキッチンへと向かって行ってしまい、後に残されたアンダーソン氏はつい興味をひかれ冊子を手にとるとおもむろに読みはじめた。
数十分後お茶の用意を終え、戻ってきた娘が見たのは貪るように小説を読む父の姿。吹き出しそうになるのを堪えつつ声をかけるとアンダーソン氏は慌てたように冊子をテーブルに置いた。
「どう? 面白いでしょう♪」
楽しそうに聞いてくる娘に強がってアンダーソン氏は文句を言った。
「ふ、ふん。あんなものたいした事はないわい!」
そう言いつつも、顔を赤らめお茶を飲むアンダーソン氏は内心『このお嬢ちゃんのような孫がいても良かったかもしれん。』と思っていたのは彼の娘や孫たちには決していえないことであった。
これはアンダーソン家におけるある一日の一コマ。