艶姿


「しばらく立ち入り禁止!」

そう君が言ったのは
君の誕生日の夕方過ぎ

もうしばらくしたら
君の誕生日パーティがはじまるのに

トラップにキットン
ルーミィたちを連れたノル
次々に猪鹿亭に向かうのに
肝心の主役がまだ出てこない

時間に遅れてるわけじゃないけど
壁一枚を隔てた向こうに
君は確かにいるはずなのに
姿は見えなくて
声は聞こえなくて
慌しい物音しかしない

「お待たせ」

やっと出てきた君は
薄化粧に大人びた真紅のドレス
ふんわりと結ばれた髪には
花の飾り物がつけられていた

「ごめんね、クレイは残っててくれたんだ」

あぁ、うん。そうだな
おれは完全に上の空で
君に見とれていた
飾った君ははじめてじゃないけど
今回の方がずっと似合っていた

「…そんなに見ないで」

じっと見つめていたおれに
君は目元をほんのり染めて
恥ずかしそうにうつむいた
そんな仕草さえ
いつもとは違うように思う

あんまり綺麗だから、と
つい本音が飛び出すと
君は真っ赤に染まった

「からかうなんて、クレイらしくないよ」

からかってなんかいなかった
言葉にはしなかったそれに
君は気がついてくれたのか
嬉しそうに顔をほころばせた

おれからの誕生日プレゼントは
貸衣装のそのドレスにしようか
値段は高いだろうけれど
普段は着れないだろうけど
それでも、君に良く似合うから

年にたった一度でも
君のその姿がまた見たいから





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