「あーぁ、全く見てらんないわ」
あくびがひとつ。
地上を覗いていたら、見覚えのある姿を発見。
こうして時々、オツトメの為に、いろんな恋を見てるんだけど、じれったいったらありゃしない!
特定の人間への干渉は、タブーなんだけど、彼女には、身体を借りたという負い目みたいなのがあって、おまけに、取
っ組み合いまでしちゃった仲だから、何となく、気になるのよ。
何とかしちゃいたいなぁ……。
ドスッ!!!
「ワンワンワン!」
「きゃっ!」
ぼんやりしていたら、後ろから何かが、体当たりしてきた。
マイケル……美の女神ダイアナのペットだと気が付いた時は、すでに遅く、下界に向って落ちて、い、っ、た……。
バキバキバキッ!
「――――――いっ、いったぁぁぁぁぁぁぁーいっ」
落ちたのは、木の上だった。
枝葉のおかげで、衝撃は減ったものの、体勢を整える事に気が回らなくて、無様な姿で墜落。
しばらく、気を失っていたみたい。
すっかり日は暮れて、森も静まり返っている。
「あんのぉ、駄犬! ダイアナのヤツぅー。 いたたた……」
痛むお尻をさすりながら、つい、報復を考えてしまう。
成績優秀なダイアナとは、普段から反目しあってる間柄だから、当然、怒りも増してしまう。
「ん? そうだ! 下に来ちゃったのは、私のせいじゃないし、ここでイイコトをすれば、オーティスさまにも誉められるし、
ついでに、あの駄犬を繋いでおくように嘆願も出来るんじゃない?
転んで、ただで起きるような、アタシじゃないわっ! フン!」
さっきまで、見ていた彼女達のいる場所は、この近く。
雲を渡れば、すぐ、たどり着く距離……。
人の気配も、まばらな夜の街に、キラキラ光るモノが、たくさん飾られている。
ぽーんと、飛び降りると、一面の光に囲まれているよう。
「そっか、今日は……」
灯かりの洩れている窓を覗くと、キャンドルを前に、微笑む二人。
彼女……パステルの横の、クレイという騎士が、照れくさそうに小さな箱を手渡している。
涙が溢れそうな瞳は、じっと彼を見つめている。
「あれは……」
彼の手で、ゆっくりとソレは薬指に納まる。
ぎこちないキスをかわして、腕の中で目を閉じる彼女……。
いたわるかのような、優しい彼に、安心しきった微笑み。
なーんだ、アタシが手伝わなくても、大丈夫じゃない。
上から見ているだけじゃ、表面に現れているものしか、見えなくて、無性に腹立たしかったりしたけれど。
人間って、何てバカなんだろうって、思ったりするけれど、こうした場面を見ると、愛おしくて、涙がでてきちゃう。
アタシは、恋の女神。 恋する気持ちが、アタシの喜び。
こんな幸せな日には、ちっぽけなコトなんて、どうでも良くなるよね。
軽やかなステップで、雲の階段をかけあがる。
まだまだ、未熟なアタシだけど、今夜は、ありったけの気持ちで願おう。
パステルとクレイに、そして世界中の恋する人達に、メナースから、祝福のキスを……。
それから、オーティスさまや、ダイアナにも……。
~~~~~~~~ メリークリスマス ~~~~~~~~