雪がちらつく2月14日。
世間体ではバレンタインデーを迎えている。
毎年、何か作ってあげてはいるんだけど、今年はどうしようかすごく悩んだ。
チョコレートはありきたり、マフラーも季節は終る頃。
お揃いの何かでも買っちゃおうかな、と考えて商店街を歩いた。
「パステルおねーしゃん、ボクも行くデシ」
そう言ったシロちゃんを肩に乗せて、出かけた。
肩に乗せている理由は二つある。
一つは地面が雪だから。保護色である雪の白さと、シロちゃんの白い毛並みでわからなくなってしまうからだ。
もう一つは、ははは。シロちゃんには悪いんだけど、その長い毛をマフラー代わりに。
もちろん秘密よ、秘密。
「やっほーパステル。どうしたの?」
猪鹿亭の傍を通りかかると、店の前を雪でお客さんが滑らないようにと、除雪していたリタが声をかけてきた。
「あ、やっほーリタ。ちょっと買い物にね」
「買い物? ……ああ、わかったわかった」
くすくすとリタが笑う。
「アレね。それならいいお店知ってるよ。この先の角を左に曲がったところに、アンティークショップの店があるんだ」
「ホント? ありがとうリタ」
「どう致しまして。またうちに食べにきてよ。父さんが来るのを楽しみにしてるから」
「うん。また行くわね」
リタにお礼を言うと、わたしは教えられた場所へと歩いていった。
……とはいえね。
何せ方向音痴なわたしでしょ? だからシロちゃんが右に曲がりそうなところを、「こっちデシ」と教えてくれたの。
シロちゃんが居て本当に助かった。
早速、アンティークショップの中に入ってみると、中世時代に来たような雰囲気だった。
「いらっしゃい」
奥から女主人が出迎えてくれた。
「あ、こんにちは」
ちょこんと頭を下げて、店内を見て回った。
「お探し物ですか? ご相談に伺いますが」
「え、あ……。ありがとうございます。その……バレンタインに何か渡そうと思って」
正直に言うと、女主人はにっこりと微笑んでティーカップをワンセット持ってきた。
シンプルな柄で色は青と白だ。
「これなど如何でしょう。スプーンに文字入れもしますが?」
そう言った女主人の心遣いで、わたしは文字入れも頼んでしまった。
『Love Clay.』
気に入ってくれるかな? そんな想いを載せながら、カランとカウベルの音を響かせて、親切なアンティークショップを出た。
アンティークショップの女主人は終始微笑で見送っていた。
ほんのちょっと、文字入れしたスプーンに魅了の魔法をかけて……。