ビスケットをご一緒に

 アンダーソン家の書斎が、私の遊び場。
 ここに居れば、いつでも、あの笑顔に逢えそうな気がする……。

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「ジンジャー? いる〜?」
 扉から顔を覗かせたのは、アンダーソン家のおばちゃま。
 何だか、とってもいい香りがする。
「……お邪魔してます」
 2階の指定席から、言葉を返す。
「丁度、ビスケットが焼きあがったの。 良かったら降りてらっしゃいな」
 おばちゃまは、唄うように話す。
 聞いていると、魔法にかかったみたいに、やさしい気持ちになる。

「昨日ね、これが届いたのよ。 ほら、この間来た、パステルが書いた冒険談が載っているの。 ジンジャーも読んでみない?」
 おばちゃまが、差し出したのは、数冊の本……といっても、表紙に「冒険時代」って書いてある安っぽい装丁の小冊子……。

「ふふっ。 とっても面白くて、一気に読んじゃったのよ」
 コポコポコポ……。
 暖めたカップに紅茶が注がれる。
 おばちゃまには、指先まで、魔法が宿っているのかしら。
 湯気までほんのり色がついているみたい。
「これからも、時々送ってくれるって言ってたから、置き場所を作りたいんだけど、ジンジャーにお願いしていいかしら?」
 にこっ。
 お母ちゃまが生きていたら、こんな風に笑いかけてくれるのかな。
 笑顔が重なってみえる。
 こくん。
 思わず、小さく頷いていた。
 おばちゃまは、普通の大人とは、ちょっと違う。
 外へ遊びに行きなさいとか、サラお姉ちゃまと私を比べたりしない。
 それどころか、私が居易い場所を作ってくれる。
 だから……。

 こくっ。
「……美味しい」
「そう? 嬉しいわ。 ビスケットも食べてね」
 ぱくっ。
「これ……」
「あっ、判った?」
 おばちゃまの微笑が深くなる。
「そう、ジンジャービスケットよ」
 いたずらを見つかった子供みたいな、ウインクのおまけ付き。
「お土産用に、少しとっておいたから、これは食べちゃいましょ」
「…………」
 こくり。 ひとつ頷いた。

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 膝の上に「冒険時代」を広げたまま、ぼんやりと窓を見る。
 シーモア……ううん、クレイって呼ばれてるんだよね。 パステル、ルーミィ、シロ、トラップ、ノル……。
 冒険談の中に出てくる、彼らには、はらはらさせられ通し。
 なんて、バランスの悪いパーティなの。
 もうひとりが加わって、六人と一匹で、何とか今まで頑張っているみたいだけれど、私のような……。
 テーブルの、ラッビングされたビスケットが視界にはいる。
 ふと顔を上げると、窓に映った笑顔。
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 私の大事なあの人達の……。
 そして、私の……。

 ――――――ここに居れば、いつでも逢える。


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